仲野太賀“諭”と草なぎ剛“武志”の兄弟をつなぐ、シリアスとユーモアを織り交ぜた脚本の巧みさ<拾われた男>

2022/08/15 17:38 配信

ドラマ レビュー

「拾われた男」第8話より(C)2022 Disney & NHK Enterprises,Inc.

諭たちの思いを笑いあり、切なさありですくい上げる巧みな脚本


それから、諭は武志からも過去の出来事の真相を聞いた。

スペシウム光線を「みんなが笑顔になれるおまじない」とショーンに伝えていた武志。諭は幼いころにスペシウム光線をされたのが嫌で仕方なかったのだが、武志の真意はそれも諭のため。母・きく(石野真子)に「土手で拾ってきた子」とキツい冗談を言われて不安がっている諭を笑わせようとしたのだ。

苦手だった武志の真の姿を知っていく諭。ひとまず帰国し、状況を父・平造(風間杜夫)ときくに伝えると、やがて武志の帰郷に備えての考えの違いで、2人がけんかしてしまう。諭の妻・結(伊藤沙莉)と娘・福子(永尾柚乃)も巻き込まれながら、家族のかたちが少しずつ変わっていく。

過去のことが現在につながって、さらに未来へと変化していく様を、シリアスとコメディを織り交ぜて巧みに見せる脚本。また、それを、仲野をはじめとするキャスト陣が絶妙な塩梅で体現する。ウッディ、エイドリアンとの話し合いのときに諭がうろたえたり、病床の武志が諭を笑わそうと麻痺の残る左手を右手で動かしてスペシウム光線のポーズしながら変顔をしたり、ショーンに諭がツッコんだり…、クスっと笑えたり、切なさや温かみにあふれ、45分で濃密な物語が描かれた。

次回、8月21日(日)放送の第9話では、ショーンとの約束を果たすため、武志になり代わり、諭は大芝居をうつ。

※草なぎ剛のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記

◆文=ザテレビジョンドラマ部