癒やし笑顔の謎の男を演じた福士蒼汰「僕自身は明るくないです(笑)」

2017/05/26 20:30 配信

映画 インタビュー

「仕事は自分を高めてくれるもの」と語る福士蒼汰撮影=大石隼土


――監督を手掛けられたのは、「八日目の蝉」('11年)などの成島出さんですね。人間の心の機微を描くことに長けてらっしゃる監督だと思いますが、成島組の現場で一番得たことは何ですか?

福士:たくさんありました。台本の基本的な読み方、役へのアプローチの仕方、自分の持っているものを100%生かすにはどうしたらいいか、そういうことを学びました。中でも、一番学んだのは、セリフの裏に隠されている思いや感情を明確にしていくことです。なぜこんなことを言うのか、なぜこういう行動を取るのかを読み取って、シーンの前後を見ることで、どう動くべきか明確になっていくんです。そうやって、自分だけのストーリーを見出すことが大切で、役に近づく大きなポイントだと教わりました。

工藤:僕もいろんなことを学ばせていただきました。青山としてその場にどう生きるのかを考え、役と向き合うようにしました。それを成島監督が丁寧に撮ってくださったので、難しかったですけど、最後まで何とか演じることができました。

――お二人は初共演ですが、ヤマモトと青山のように互いに救われるような部分はありましたか?

工藤:たくさんありますね。福士君は仕事に対してマジメで真摯な方ですし、一緒にやらせていただいて感じたのは、本当に表情が繊細なんですよ。だから僕も自分が本当に“救われた”と思えるところまでもっていけたし、相手が福士君じゃなかったら、あそこまで納得して演じることができなかったと思います。何より、福士君が撮影に合流するまでが本当につらいシーンの連続だったので、福士君が撮影現場に来たときに“これでやっと救われる”と思いました(笑)。

福士:僕が思った工藤さんと青山の共通点は、真っすぐな部分なんです。それは主に目に感じたんですが、一緒にお芝居をしていて、本当に青山の目だなと思いました。青山の悲しんでいるときや輝いているとき、その全てが目に表れていて、ヤマモトを演じる上でも、工藤さんの目の表情にすごく助けられたと思います。

――お二人には青山にとってのヤマモトのような背中を押してくれる人はいますか?

工藤:大学時代からの親友が二人いて、彼らは一緒の空間にいれくれるだけでいいというか、3人の間では言葉が必要ないんです。お互いに話をしなくても、別のことをしていても、その空間が居心地よくて。本当に何かあるときは、それを少し話せば、すぐに理解してくれますし、僕にとってのヤマモト的存在だと言えると思います。でも、いつどうやって仲良くなったのか覚えてないんですよね(笑)。きっと親友って、そんなものなんでしょうね。

福士:自分は基本的に、人に相談することがなくて、それより何より、僕は生きていて落ち込むことがないんです。もし悩んだとしても、寝るか、行動するかのどちらか。今日解決するのは無理だと思ったら寝るし、解決できそうなら、その悩みごとに対してどういう解決策があるのかを考えて、それに向かって行動します。そうすれば大抵のことは大丈夫になるんです。

工藤:僕も誰かに悩みを相談することは、あまりないかも。福士君と同じで、基本的には自己解決派なので。

――では、もしお二人がブラック企業に勤めたら、どういう決断を下すと思いますか?

工藤:ブラック企業って…、どこからがブラックなのかな?と思います。就業時間を守らないとブラックなのか、上司から罵声を浴びせかけられたらブラックなのか。でも、昔はブラック企業なんて言葉はなかったですよね。たぶん、そこに愛があるか、ないかの違いであって、愛があったら必ず相手も受け止めてくれると思うんですよ。だから、もし自分がそういう会社に勤めたら、たぶん会社に対する見方を変えると思います。別の見方をすれば、違うアプローチもあるんじゃないかなと思うし。きっと言う方も言われる方も何かしらの理由があると思うので、そこを明確にしたうえで、対処法を考えると思います。

福士:どうだろう。「ミスったなぁ」って思うんじゃないでしょうか(笑)。たぶん僕は、速攻でめっちゃいい仕事をして、上にのぼりつめて会社の体制を変えるか、それが無理だと分かったら辞めると思います。だって、「無理」ってなったら、会社にいる意味が見出せなくなりますからね。

――では、最後に、今回の映画は“仕事”がテーマになっていますが、お二人にとって仕事とは何ですか?

福士:今やっている役者という仕事は、自分のスキルを上げてくれるものかなと。今回の関西弁もそうでし、職業ものや技術者ものもそうですけど、俳優は役のためにいろんなことを学ばないといけないので、それを続けていけば必然的に自分のスキルが上がっていくと思うんです。そして、それは人間としての魅力にもつながると思うので、仕事は自分を高めてくれるものなのかなと思います。

工藤:あらためて考えると難しいですね。

福士:「仕事とは?」って、なんだか「情熱大陸」みたいで(笑)。

工藤:僕も福士君と同じように思っているところもありますけど、「仕事とは?」というよりも、生涯一つの仕事を見つけられたら幸せだろうなとは思います。まだこの先どうなるか分からないですけど、それが役者であればいいなって。たぶん生涯をかけてのめり込める仕事に出会うことって、なかなかないと思うので、もしそれが今出会えているのなら、自分は幸せ者だなと思いますね。でも、きっと自分に守るものができたら、仕事に対する考えも変わってくると思うので、今はまだ明確な答えを出せていないというのが正直なところですね。