阿部寛、SNSには“苦手意識”も「何か約束事ができてしまうような場は作りたくない」

阿部寛にインタビューを実施した撮影:永田正雄

のちに映画化もされた「ボクたちはみんな大人になれなかった」で小説家デビューを果たした燃え殻のエッセイを、国内のトップクリエイターたちがドラマ化した「すべて忘れてしまうから」で、阿部寛が久しぶりのラブストーリーに挑戦。WEBザテレビジョンでは、突然消えてしまった彼女“F”に翻弄(ほんろう)されるミステリー作家“M”を演じる阿部にインタビューを行い、初めて配信作品に参加した感想や現場での監督とのやりとり、共演者であるChara宮藤官九郎の印象などを語ってもらった。

9月14日(水)よりディズニーの公式動画配信サービス・ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」で独占配信される同作は、阿部演じる作家“M”を主人公に、大人の心に染みわたる消えた彼女“F”を巡るミステリアスでビタースイートなラブストーリー。

新鮮な気持ちで挑戦させていただきました


――クランクインの時に「(撮影を通して)見たことがない自分が少しでもそこにいてくれるといいな」と仰っていましたが、何か新しい発見はありましたか?

台本に書かれている言葉はいかにもセリフという感じではなく、本当に日常の会話のようなセリフなんですよね。決して人を傷つけるようなセリフではないのにそれを聞いた人がちょっと寂しい思いをしたりとか。

そういう普段の日常の言葉が台本に反映されているストーリーが挑戦的だなと。最近は強い男の役が多かったので今回の“M”のような役は久しぶり。そういう意味では新鮮な気持ちで挑戦させていただきました。

――役に対してのアプローチも新鮮でしたか?

何もかも自分が背負うというより、今回は監督に委ねてみようかなと思いました。

――ミステリー作家“M”を監督と一緒に作り上げていった感覚ですか?

もう、ずっとそんな感じです。自分が思ってこうやって演じようとしたものと、監督が思っているものをすり合わせながら作っていきました。

監督の中で世界観がちゃんとしていたんですよ。1回テストをやって、今のはこうだったけどこういうふうにしてみましょうとか。セリフの言い回しや気持ちだったりというものに対して細かい演出がすごくありましたね。

この年になると、なかなかそういう細かい演出って受けないんですよ。だから遠慮なくどんどん言ってほしかったし、僕だけではなくて他のキャストにも同じように細かい演出をされていたので久しぶりにいい経験ができました。

“相手役”とは「ホッとしながら芝居をすることができました」


――今回の作品はドラマ「まだ結婚できない男」(2019年、フジテレビ系)以来となる、久々のラブストーリーですよね?

「まだ結婚できない男」は変わっていましたけど(笑)、今回もちょっと異色なんですよね。ラブストーリーといってもミステリー要素のほうが強い。でも、“M”の相手となるキャラクターを演じる女優さんとは以前も共演したことがあるので安心感というかホッとしながら芝居をすることができました。

――役者にとってラブストーリーの醍醐味(だいごみ)はどんなところでしょうか?

人と人が内面を濃く探り合っていきながら傷ついたりする様って、本人たちが真剣であればあるほど面白いし、傍から見ると滑稽なんですよね。そういう人間としてのいろんな面が出せる面白さがあるような気がします。