劇場版の公開に先駆けて、9月18日に京都で劇場版「四畳半タイムマシンブルース」特別上映会が開催された。浅沼に加え、森見(原作)、上田(原案・脚本)、夏目(監督)、中村(キャラクター原案)とメインスタッフが勢ぞろいし、舞台あいさつを行った。
5人が登場すると満員の観客席から大きな拍手に迎えられ、「作品の舞台となっている京都でこの面子でここに立つことができて、僕もファンのような心境で打ち震えています」(浅沼)、「この面子で話すこともなかなかないので、どんな話が聞けるのか僕自身も楽しみです」(夏目監督)とそれぞれがあいさつした。
まずは、本作が生まれた経緯について、森見は「上田さんには僕の作品を度々脚本化してもらっているので、たまには僕が上田さんの舞台を小説化することに挑んでみたいと。『四畳半神話大系』のキャラクターを使ってというのが始まりでした」と説明。
一方、その話を受けた上田は「最初は喜びすぎたら森見さんのプレッシャーになるんじゃないかと思って、そーっとしたリアクションをした気がします(笑)」と森見からの提案に大喜びだったことを明かした。
そんな小説がアニメ化することになり、監督のオファーを受けた夏目監督は「率直にうれしかったです。TVアニメ『四畳半神話大系』に演出として参加させていただいたのですが、やっていて楽しい作品だったので、終わったのが寂しかった。だから、監督のオファーを受けて、あの楽しさをもう一度経験できると思ってうれしかったです」と語った。
そして、前作から12年ぶりのキャラクター原案続投について、中村は「浅沼さんとは12年の間、時々近況をお話していましたが、こうしてまた作品で出会えて、自分が描いたキャラクターに浅沼さんが声をあててくれてすごくうれしかったです」と喜びを語ると、皆が喜びを語ってきたことを受けて浅沼は「この流れだと僕が苦労話をしなきゃいけない感じですか?」と笑わせた。
また、浅沼演じる「私」のキャラクターの変化について森見は「『四畳半神話大系』の世界はもう再現できないし、自分が大学院生だった頃に書いたようには書けない。そもそも『四畳半神話大系』の続編をやるというよりは、ヨーロッパ企画の舞台『サマータイムマシン・ブルース』を小説にするチャレンジだったので、無理に『四畳半』に寄せるのはやめようと思っていました。それでキャラクターが成長したように見えるんじゃないかと。今回は、キャラクター達が外で動いて話を進めるようになっています」と説明。
それを受けて浅沼は、「僕にとって特別に思い入れのあるキャラクターだったので、成長していてほしくない部分があって。愚かで、どこまでも不毛でいてほしいという歪んだ愛情があったんです(笑)。本作では『私』がどこか頼もしく見えてしまって、『これって成長しすぎじゃないですか?』と、夏目監督とディスカッションさせていただいて。そこからは、変化や成長に対する恐怖がなくなって、録り直しもして丁寧に作っていただいて、納得のいく作品になりました」と思いを熱弁。
すると、夏目監督が「浅沼さんが『私』みたいですね(笑)」と言い、浅沼は「上田さんから『私』みたいにめんどくさいって言われました(笑)」と返した。
最後に、「完成した作品を見た時にキャラクター原案として関わるアニメとして全く不満がなくて。全部完璧にパズルがそろった感覚になった作品です」(中村)、「作っていて手ごたえのある作品でした。原作の持つ空気感をうまく表現できたと感じています。夏の終わりにぴったりだと思います」(夏目監督)、「すごく京都が良く見える作品だと感じています。自分の住んでいるところってこんな感じだったっけ!?と錯覚するぐらいすてきな京都が描かれています。ぜひ、その目で京都を歩いてみてください」(上田)と話した。
さらに、「僕も上田さんも京都で大学時代を過ごしていて、同じような土壌から妄想して別々に生まれてきた作品が、20年ぐらいの時を経て合体したというのが面白いことだと感じています。僕はもう10回ぐらい見ていますが、まだ全然飽きない。皆さんも何度も見てください」(森見)、「3週間限定という、青春時代の夏のような短さの劇場公開なので、好機が過ぎ去らないうちに見てもらえたらうれしいです」(浅沼)と、それぞれあいさつ。会場からの大きな拍手で舞台あいさつは終了した。
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