坂本昌行、連続児童殺人犯の役に「正直分からなかった」役作りの苦労を明かす

2022/10/02 06:10 配信

芸能一般 会見

「凍える」で連続児童殺人犯を演じる坂本昌行と精神科医役の鈴木杏※ザテレビジョン撮影

坂本昌行が出演するパルコ・プロデュース2022「凍える」(原題:FROZEN)が、10月2日(日)よりの東京・PARCO劇場の公演を皮切りに、福島、兵庫、豊橋、松本、新潟、北九州、沖縄で上演。1日にフォトコール&初日前会見が行われ、坂本の他、長野里美鈴木杏が登壇した。

1998年にイギリスで初演された本作は、2004年にアメリカ・ニューヨークで上演され大評判となり、同年に演劇賞の権威「トニー賞」のBEST PLAYにもノミネートされたブライオニー・レイヴァリーのヒューマンサスペンス。10才の少女ローナが行方不明になった日から20年後のある日、連続児童殺人犯が逮捕された。児童連続殺人犯のラルフを前に、ローナの母・ナンシー、精神科医・アニータがそれぞれ対峙する。3人それぞれの内面に宿る氷の世界。拭いきれない絶望感、消えることのない悲しみ、やり場のない憎悪。3人それぞれの止まったままの時間は、再び動き出すのか――。

演出を手掛けるのは栗山民也氏。そして、初舞台を踏んだミュージカル「阿国」(1992年)以来30年ぶりに栗山演出作品への出演となる坂本が、児童に執着し殺人を繰り返してしまう難役に挑む。また、20年間愛する娘の生還を信じ続け、娘の死を知らされた今も現実を受け入れることの出来ない母親を長野が、鈴木が坂本演じる殺人犯の担当精神科医を演じる。

演じるな、表現するな


フォトコールを終えた坂本は、「なかなか見たことがない、不思議というか怖いというか、どう捉えていいか分からない作品だと思うんですけども、栗山さんから頂いた言葉は『お芝居をするな。この舞台にいる以上、リアルにドキュメンタリーでいてくれ』ということを非常に強く言われて。非常に難解な作品で、難解な役ではあるんですけれども、自分の引き出しを全て出し切って頑張っていきたいと思います」と意気込みを語る。

30年ぶりに栗山氏の手掛ける作品に出演することについては、「もう30年もたっていますので、すっかり忘れておりますが、過去は過去。そして、30年後にまたお会いして、稽古場で同じ空間でいろいろとご指導いただいて、やはり演技というか、改めて役作り、作品作りの大変さ、難しさ、奥深さ、楽しさ、面白さというのを一瞬一瞬感じながらやっていました」と稽古を振り返った。

そして、「栗山さんから『演じるな、表現するな』と(言われて)。今までは『表現しなさい』と言われていたことが逆に『表現するな』ということで。イコール、リアルに生きたせりふを言わなきゃいけないという難しさを、改めて今回勉強させてもらったなという感じですね」と、栗山氏の演出の印象を明かした。

「凍える」初日前会見より※ザテレビジョン撮影


目の前にあるラルフという役と向き合いながら役作り


また、連続児童殺人犯を演じることには「どのようなところから役に近づいていったらいいのか、正直分からなかった」と、最初は役作りに悩んだという。

「いろんな痛みを抱えている人間ではあることは理解して。実際、自分はそういうことはやってはいないですが、やっぱり人である以上、心の奥底になんらかの痛みであったり、苦しみであったりというのを持っていると思うんですね。自分の過去を振り返った時、大なり小なりあったことを思い出して、それをラルフと重ね合わせた時に『ここはあの気持ちをもっと膨らませたら、もっと痛みが出るのかな』とか、そういうことをやりながら構築していきました」と話す。

さらに、「杏ちゃんからは本をお借りして、脳についてのトラウマだったり、いろいろな発表がされている本があったんですけども、それを読んでいくうちに『あ、なるほどな』と。アニータのせりふの中にもあるんですが、ただの悪人ではない、何らかの障害、トラウマを抱えて生きているんだなと。それを純粋に言葉にできた、という思いで、自分の役者の演技プランの引き出しも少ないので、がむしゃらですけども、とりあえず目の前にあるラルフという役と向き合いながら役作りをしてきました」と、難しい役を作り上げた苦労を語った。

作品をより大きく、より深く詰めていきたい


同作品は、東京を皮切りに8カ所で上演する。坂本は「ここまで行くのは、お芝居では初めて。会場が変わればお客さんも変わり、どのような受け止め方をしてくださるのか、そこが一番楽しみではありますね」と、地方公演への思いを吐露。

「人間の闇、痛みというものを非常にリアルに表現されている作品だと思っています。また、演出方法もなかなかを見たことがない形で表現されたと思いますので、見に来てくださった方がこの作品に何を感じて、何を考えていただけるのか。その結果、どのような皆さんが言葉を発するのか。それも踏まえて、僕らはこの作品をより大きく、より深く詰めていきたいと思っています。本当に“舞台は生き物”という言葉通り、もしかしたら日々変わっていくかもしれません。それを毎回毎回見てくださる方に楽しんでいただけたら」とあいさつし、会見を締めくくった。

「凍える」フォトコールより※ザテレビジョン撮影