娘は引き下がらなかった。
「ママ、あやまればいいじゃん」
「うん、謝ったよ。うん。ごめんなさいね、同じおうちは」
「わかった」
「ママ」
「なあに?」
「じゃあ、あたしもいっしょにあやまってあげる」
これは新しい展開。
娘もあの手この手で攻めてくる。
成長しているわけだ。と、感心している場合ではない。
「あたしが、あやまってあげる」
「…」
「だいじょうぶだよ、パパやさしいから」
「……」
「ママ、なかなおりしなよ」
「仲直りは、しているから、大丈夫。ありがとうね、ありがとうね」
「なかなおりしてるの?」
「しているのですよ、ご心配いただいて」
「なかなおりしてるなら、いっしょのうちにして」
「いや、これが、これは、ごめんね、それは出来ないのですよ」
「いやだいやだいやだいやだ!」
娘は得意のスイッチを入れた。
突然の怒りのスイッチ。さすがわたしの娘。と感心している場合ではない。
「……」
「いやだいやだいやだいやだ!」
おんぶされている娘は、のけぞるようにカラダを曲げて怒った。
「大好きだよ」それしか言えなかった。
「そんなこと聞いてない!」
ランドを出て最後の売店の前を通りかかり、わたしは聞いた。
「マイクのメロンパン、買う?」
「買う!」
娘は怒りながら答えた。
娘の好きなメロンパンを2つ買っていると急に背中が重くなった。眠くなったのだろう。
「疲れたでしょう?」
「疲れてない!」
最後のチカラを振り絞って娘は怒っていた。わたしは、今夜も、こう言った。
「もう、寝なさい」
ランドの音楽が、どんどん遠くなって、娘は全身をわたしに預けて、それは、ずっしりと、重かった。
すっかり眠ってしまった娘にわたしは言った。今日も明日も明後日も。ママもパパも。
「大好きだよ」
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