木村文乃ら魅力的な秘書たちが紡ぐ「七人の秘書」ドラマ&劇場版の魅力を徹底解説

映画「七人の秘書 THE MOVIE」が公開中(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

木村文乃が主演を務める映画「七人の秘書 THE MOVIE」が全国の劇場にて公開中。本作は2020年にテレビ朝日系で放送され、人気を博したドラマ「七人の秘書」の劇場版だ。映画公開に合わせ、ドラマシリーズと10月2日に放送されたスペシャルドラマがTVerで無料配信中。個性豊かな秘書たちによる勧善懲悪のストーリーが魅力のドラマシリーズを振り返るとともに、アクションシーンがさらにスケールアップした劇場版をレビューする。

秘書が悪人を成敗する勧善懲悪ストーリーが痛快


「この世は万事、表があれば裏がある。光があれば闇がある。そして、その闇の中にこそ、光る真がある。これは、そんな名もなき秘書たちの秘密の物語である」

岩下志麻のお決まりのナレーションが映画館に響き、あの七人が帰ってきたことを知らせた。あの七人とは、木村文乃広瀬アリス菜々緒シム・ウンギョン大島優子室井滋江口洋介という豪華面々が演じる秘書たちのことである。

七人の秘書」は、「ハケンの品格」(日本テレビ系)や「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)シリーズなど、魅力的な女性を主人公とした物語に定評のある脚本家・中園ミホが手がけるオリジナルストーリー。表では“名もなき秘書”として働く七人が、裏では「類い稀な潜入スキル」や「極秘情報ネットワークへのアクセス能力」、そして時には「秘めた高い身体能力」を駆使して、人知れず弱きものを救う“影の軍団”として暗躍する姿を描いている。

2020年10月期に放送されたドラマは回を追うごとに視聴率が上がり、最終回では番組史上最高記録となる世帯視聴率16.7%で有終の美を飾った。「現代版・必殺仕事人」とも評される所以は、正義のヒーローが悪人を懲らしめ、善人が救われるという勧善懲悪のストーリーにある。しかもその正義のヒーローが「名乗るほどの者ではございません」と語る、普段は目立たぬことを極意とした秘書という点に目新しさがあった。

秘書のくせに、女のくせにと見下されがちな彼女たちが実はさまざまな能力を秘めていて、金と権力にまみれた権力者たちを一掃する様が実に痛快で、エンターテインメント作品としての完成度が高い。市民を守るはずの警察による性的被害、高級住宅地への児童養護施設建設中止問題、ディープフェイクによる詐欺被害など、他人事とは思えない社会問題にも巧みに切り込んでいた。それでも作品全体が重苦しくならなかったのは、七人の秘書たちが完璧なだけじゃない人間味のあるキャラクターとして描かれていたからだろう。

あの七人が再集結(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

人間味あふれる秘書たちの魅力


簡単に七人の魅力を振り返っていこう。まずは後から秘書軍団に加わった広瀬アリス演じる照井七菜。彼女は大手銀行の頭取秘書を務めているが、おっちょこちょいで決して仕事ができるわけではない。でも誰より正義感が強く、温かみのある素朴な人柄が魅力だ。彼女がいるからこそ、コミカルでクスッと笑える作品に仕上がっていて、特にドラマでは主演・木村文乃、ヒロイン・広瀬アリスとも言えるほどの存在感を放っていた。

ちなみに中園ミホは脚本を書く際にあて書きが多いことでも有名だが、本作でも登場するキャラクターとそれを演じるキャストがぴったり。特にハマり役なのが、菜々緒が演じる元警視庁警務部長秘書の長谷不二子だ。何でも着こなす抜群のスタイルと、アクションシーンでの軽やかな身のこなしに毎度見惚れてしまう。一見冷たく思えるが、実は面倒見がいい姉御肌。他の6人が知らぬ間に子どもをもうけており、父親の存在が気になるところ。

そんな不二子と何かとぶつかりがちなのが、大島優子演じる元東京都知事秘書の風間三和。裕福な家庭に馴染めず、父親をはじめとした家族と距離を置いている。三和は一言でいえば素直じゃない。本当は仲間たちを大事に思っているのに、つい心にもないことを言ってしまう場面も。だけどそんな彼女は見ていて愛おしいし、密かに片思い中の萬(江口洋介)の前だけで見せる表情にキュンとさせられた人も多いはずだ。

秘書軍団の頭脳とも言えるのが、シム・ウンギョン演じる元病院の院長秘書・朴四朗(パク・サラン)。彼女がいなければ、数々の悪人は成敗できずに終わっていたであろう。それくらいサランのハッキング能力はチームにとって欠かせないものである。彼女の決め台詞「懲らしめてやりましょう」が合図となり、成敗が始まるのもお馴染み。本作におけるシムの演技力も高く評価されており、サランが生き別れた父と再会したシーンは特に涙を誘った。

そして、個性豊かな彼女たちをリーダー的な存在として牽引していくのが、主演の木村演じる元銀行の常務秘書・望月千代。最初は一切笑顔を見せず、毒舌でロボットのようなキャラクターかと思いきや、回を増すごとに千代の人間味が溢れてきた。少ない持ち金を宝くじ購入に充てたり、劇場版では子どもに対して大人げない面を見せたりと、“完全無欠のカリスマ秘書”ではあるがコミカルなところも多々ある。

本作はそんな5人のシスターフッド(女性同士の連帯)も色濃く映し出されている。とはいえ、べったりとした関係性ではない。みんなどこか秘密主義で自分のことを話したがらないし、相手が秘密にしていることを無理やり聞き出したりもしない。だけど根底では互いを思いやっていて、ピンチの時は必ず駆けつける。確かな絆は存在しているけど、適度な距離感を保っているのがいい。

また、そんな彼女たちを年長者としてそっと見守る元政治家秘書の室井茂演じる鰐淵五月と、江口洋介演じる萬敬太郎の温かな眼差しにホッとさせられる。そこにはずっと見ていたくなる抜群のチームワークがあり、ドラマシリーズが終了し一度はバラバラになった彼らが、10月2日に放送されたスペシャルドラマで再集結した際には心底嬉しかった。