『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」

女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある

女性同士の恋愛を描くドラマはまだ少ない 「作りたい女と食べたい女」4話より (C)NHK


近年、男性同士の恋愛を描くドラマは増えてきており「BLドラマ」としてジャンルを確立しつつあるが、女性同士の恋愛作品はまだ数少ない。この作品を作る上で特に留意している点について尋ねた。

「女性同士の恋愛を描く作品はまだ少ないので、今後の作品に与える影響も意識しています。今回スタッフ内で話し合い、この作品においては“ジャンルとして消費される”のを避けるために『GL』という打ち出し方はしませんでしたが、女性同士の恋愛ということを薄めたい意図ではありません。ジェンダー・セクシュアリティ考証として、セクシュアリティやジェンダーについて漫画で発信するメディア『パレットーク』編集長の合田文さんと、ジェンダー・セクシュアリティ研究者でご自身もレズビアン当事者を公表している中村香住さんに監修を担当いただき、メディアとして発信する視点・アカデミックな視点の両方から、丁寧に台詞や表現について検討していただいています。当事者の方が、番組が発するメッセージから偏見や搾取を感じる要因をなくしたいと思っています。

同時に、今なお同性愛に対して抵抗感がある方がいるのも事実です。だから、ドラマにする上で難しかった点のひとつが、野本さんがレズビアンを自覚し受け入れる場面の描き方でした。彼女が気づいた自分の感情とどう向き合うか。スッと受け入れるのか。もし葛藤があるとしたら、それは何に由来しているのか。社会から押し付けられたバイアスなのか。そういった点をよく話し合いました」

確かに、遺憾なことではあるが、今の日本では完全に同性愛に対する偏見がなくなっているとは言い難い。そんな中、坂部さんがこの作品にこめる狙いは何なのか。

「『つくたべ』では、女性同士の恋愛が自然に描かれています。野本さんと春日さんも、隣にいそうな人たち。彼女たちの恋愛が、悲恋や、異性愛キャラクターのかませ犬のような形でなく、自然な形でメインで描かれることに意味があると思います。もちろん、当事者の方からしたら『やっとかよ』と思われるでしょうし、現実に社会に存在している方々に対して、ドラマをはじめとするエンターテインメントが追いついていない事実はあります。でも、その『やっと』をドラマで繰り返し広げていくことで、社会の側にも『女性同士の恋愛も当たり前にあるよね』という意識が広がったらいいなと思いますし、それが社会とつながったドラマというものの作用だと思っています」

ふたりの恋愛を自然な形で描く「作りたい女と食べたい女」4話より (C)NHK


最後に、放送を楽しみにしている視聴者へのメッセージをもらった。

「もちろん結果としてどう受け止められるかは視聴者の方次第という覚悟は持ちつつ、原作を好きでいてくれる方のためにも、原作が持つ魅力やエッセンスを損なわないように忠実に描きたいと考えています。同時に原作ファンでない方にもご覧いただきたいですし、どちらかというと女性の方が共感を持つ題材だろうことは理解していますが、自分は男性なので、作品を通じて男性にも新しい何かを感じてもらえたら嬉しいです。そして視聴者であるレズビアン当事者の方を裏切りたくないと思っています」