――小栗旬さん演じる北条義時はいかがでしたか?
小栗さんは演じていて辛い時は辛い、悔しい時は悔しいと言う素直な方なので、義時が憑依しているかのように現場にいらっしゃることがあって、でも私は「頑張ってね」としか言えなくて、それが姉・政子として情けないなと感じました。同じ役者としても、もっと支えられたらいいのにという思いも抱いてやきもきしていたことはあります。でも、旬くんが「地獄を見ようが最後まで一緒に頑張ろうね」と言ってくれて、それがとてもうれしかったです。
家族や姉弟で始まった物語なので、きっと最終的に三谷さんは家族の話で終わらせるのだろうと思っていました。撮影が進むにつれて御家人たちがどんどんいなくなって、気づいたら本当に家族しかいなくて、撮影もずっと家族だけで撮影しているような感じで、「でも家族の物語が家族で終わるというのはある意味幸せだよね」などと話していました。約一年半の撮影で役の中ではありますが、旬くんと本当の家族になれたと感じています。
――頼朝と頼家、実朝と3代の将軍を見つめてきた政子ですが、それぞれのキャラクターについての思いを教えてください。
頼朝が、一番癖がなかったのかもしれないと思います。彼は自分の夢を追って突き進んでいましたが、決して悪い旦那、悪いパパではなく、ちゃんと政子と向き合っていたと思いますし、かわいらしいところもあり、みんなが憧れるカリスマ性もあり、それはモテるだろうな、と思う良い男だったと感じています。
一方、頼家は偉大な父を持ったことの反動で屈折してしまった部分があって、実朝も政子が頼家を失ったことで過保護にし過ぎて、少し腫れ物に触るように接してしまったなと思います。子どもがどういう人間になっていくのかというのは、親の影響が大きいと思うので、乳母が育てている時代だから現代とは親と子どもの距離感も違いますけど、ダメな親だったな、という感想が残っています。
頼朝が生きていたとしても頼家とぶつかっていただろうし、男の子を育てるということは大変だと感じました。本当に3人とも大切な存在で幸せになってほしかったし、そうできなかったのは自分の責任だなというのは撮影が終わった今もなお感じています。