ヒプステ・新生 “麻天狼”初顔合わせ鼎談「このメンバーで歌うことで、すべての曲が新曲になる」

原作で生じた変化を、舞台でもちゃんとグラデーションで見せられたら

“麻天狼”撮影=曽我美芽


──シンジュク・ディビジョンとして物語が進むのはひさしぶりですが、今作ではどのような神宮寺 寂雷、伊弉冉 一二三が見られそうですか?

鮎川 今回の《Bad Ass Temple VS 麻天狼》では、寂雷と、旧友の天国 獄との関係がフィーチャーされます。これまで寂雷先生は自分の過去をあまり話してこなかったのですが、今回は過去が見える。ずっと敬語で話していた寂雷先生が、獄とはタメ語で話したりもする。そのぶん、凛として揺るがなかった先生の弱い部分も見えてしまう。これまでは普段の姿と、お酒に酔った姿の二面性しか見せていませんでしたが、今回は過去と現在という二面性が見える。そこは今までと違うところですし、見てもらいたいところでもあります。

荒木 一二三も変化は起きていると思います。今回は先生の話を掘り下げていくうえで、シンジュク内で絆を深めていかなきゃいけないんですよね。それって今までのシンジュクにはなかったことで。なぜなら、シンジュクって大人なチームだから、相手が思っていることをそれとなく汲み取って、それ以上は入り込まないようにしてきた。「ある程度の距離感を取って仲良くやっていきましょうよ」という関係性。そんなシンジュクの中で、他人のプライベートに踏み込むことができるのって、ジャケットを脱いだときの一二三しかいないんですよ。これによって、一二三が独歩のことを連れ回せるようになったし、先生の過去をちょっと引き出せるようになった。この変化というのは、原作CDのドラマトラックで追いかけている方や、原作のライブを追いかけている方はグラデーションで感じているものなので、舞台でも一気に変化するのではなく、きちんとグラデーションで見せられたらと思っています。それでいて、原作を追っていない人やヒプステを今回から見る人でも、ちゃんと理解できるような表現を作らないといけないなと思っています。

──井出さんは独歩をどういうキャラクターだと捉えて、どう演じようと思っていますか?

井出 脚本を読んで最初に、“大切なのはこの3人の関係性だな”と思いました。それこそ3人の距離感もそうだし、何よりも独歩はとにかく先生をリスペクトしている。だから「昔から一緒にいる」「いて当たり前」みたいな一二三と独歩と、先生の“二等辺三角形”をどう作るかを考えながら演じたいなと思っています。独歩の社畜度に関しては……自分も思い当たることがいっぱいある(笑)。やらなきゃいけないことに追われるというのはたくさん経験してきているので、そういった過去の財産が、勝手に独歩を社畜にしてくれると思います(笑)。

鮎川 これから、ヒプステでもさらに増えますよ(笑)。

井出 過去の曲の振り付けも、僕だけ新しく覚えないといけないわけですし。それも役作りの手助けになると思います(笑)。