<アトムの童>オダギリジョー“興津”、初めての「ぷよぷよ」プレイで忘れていた初心を思い出す

2022/12/05 11:36 配信

ドラマ レビュー

ジョン・ドゥのゲームを「奪った」のではなく「守った」…?


那由他は アトムの人々に「興津は思ってるほど悪いヤツじゃないかも」と言うが… (C)TBS


かつて、公哉(柳俊太郎)が那由他らが開発したゲーム「スライドブーン」を、SAGASの次に外資系のベンチャー企業に持っていこうと考えているのを知った興津は、評判の悪いその会社が「スライドブーン」を奪うのではないかと思い、守ろうとしたのだ、と言う。そして、結局完成できなかったらもったいないから、その時はSAGASが変わって完成させるという契約をしたのだと、当時の想いを説明した。だが、「契約なんて、立場によって見方が変わる。こちらにそのつもりが無くても、キミたちからしたらオレはゲームを奪った悪党なんだろう。理解されないことはわかってる。オレは日本中から嫌われてるからね…」と、冷静に自分の立場を把握していた。

「それは、アンタが人を大事にしなかったからだよ」。那由他の言葉にハッとした興津。その一瞬の隙をつかれて「ぷよぷよ」は負け、興津はすかさずリプレイを押した。

興津の本心ともとれる発言を聞いて、Twitterには「何で当時そう説明してやらなかったんだよ」「ちゃんと話してたら公哉は死ななかったかもなのに」と、当時、問いただしに来た那由他たちを振り切って車で逃げた興津を責めるコメントが続々。また、「一瞬、いいヤツじゃん。って思いかけたけど、公哉を死に追いやったこととアトムをどん底に落としたのは許さないからな!」といった、この程度の言い訳では過去の行いは帳消しにできない視聴者も多く見受けられた。

興津がかつての恩人に語った言葉は本心、それとも詭弁?


結局そのまま夜通し勝負をして、その足で興津が向かったのは、SAGASの株を8%も保有する大株主の佐野総一郎(山崎努)の家だった。佐野は、興津がSAGASを起ち上げた際、援助してくれた人物でもある。SAGASの買収を企む宮沢ファミリーオフィスに対抗するには佐野の株が不可欠で、先日も挨拶に来たのだが、その時には「両者の言い分を聞いてからどちらに付くか決める」と言われたのだった。

再び佐野を訪ねた興津は、「技術とは“人”です。データや製法だけを借りてきてマネできるモノではない。ですが、私はSAGASが大きくなるにつれ、利益ばかりを求めてきた。人を大事にしてこなかった。自分だけしか信じられなくなって初心を忘れていたのかもしれません」と告げ、「私は初心に、会社は原点に立ち返ってこれからは経営していきたいと思います」と、決意を伝えた。

興津のこの言葉が、最近の自分をかえりみての本心なのか、佐野の委任状が欲しいが為の詭弁なのかは、正直判断がつかなかった。那由他がアトムの面々に語ったように、思ったほど悪いヤツじゃないかもしれないし、「少なくとも技術を守りたいって想いに嘘は無い」のかもしれない。以前、公哉の墓参りに来ていたことからも、強引なやり方で死なせてしまった後悔があったのかもしれない。だが、「アトムロイド」の権利を手に入れるために卑怯な手を使い、アトムの人々をどん底に叩き落したのは、どの立場から見ても「悪党」の所業だし、「そのつもりが無かった」とは言わせない。

しかし、那由他の部屋にやって来て「ハウスダストがニガテなんだよ」と言いながら自分の居場所を作り、2人並んでゲームをしているとき、どこか兄弟のような雰囲気で、穏やかな空気が流れていた。あの時に興津が話したことはすべて本心だと思いたい。彼らは出会うタイミングと出会い方が違えば、良い関係になれたんじゃないか、と思える場面だった。

初心を思い出した興津が、公哉の家族や那由他、隼人(松下洸平)、アトムの人々に心から謝罪するシーンが最終回で見られることを期待したい。

※山崎賢人の崎は正しくは「たつさき」
※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

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