――撮影中、大変だったエピソードがあればお聞かせください。
音が幼い子供の人格になってしまうところがありますが、最初は「どこまでやっていいのだろう」という線引きが難しくて。ふざけているように見えるのは絶対に嫌だし、でも、落ち着きがありすぎてもそれは別の人格には見えないし…というふうに、その加減がすごく難しかったのを覚えています。
自分なりにいろいろ調べたり、DIDのことについて勉強していく中で、この症例は、症状が本当に人それぞれなので、形にとらわれず、思い切って飛び込んでしまえばいいのかなというふうに自分の中に落とし込んで挑みました。すごく成長できましたし、達成感がありました。
――DIDについては、どのように勉強されましたか?
いただいた資料を読み込んで、その上で、DIDなどを取り上げているドラマを参考に見たり、なるべくドキュメンタリーなどリアルな姿が分かる動画を見ました。
――逆に楽しかったことがあればお聞かせください。
今まで、ここまで怒鳴ったり大きい声を出したりする役がなかったので、あまりやったことのない役を預けていただくというのは役者としてすごくやりがいもあり、純粋に楽しかったです。
――沢村一樹さんの印象をお聞かせください。
事務所の先輩である沢村さんは、初めてお会いしたのですが、すごく優しくフォローしてくださいました。沢村さんとは本読みやリハーサルができなかったのですが、現場に入った瞬間から親子の空気感を作ってくださり、本当に自分の父親のような、温かい人間性の沢村さんを見て、音としても引き出されるものがありました。
――竹内涼真さんの印象をお聞かせください。
竹内さんも、今回初めてご一緒させていただきました。私と同じDIDを抱える役だったのですが、リハーサルの段階から圧倒されてしまうくらいの熱量を持ってお芝居をされていて。私も自分の中で作り上げてきたものがあったつもりではいたのですが、リハでの竹内さんの姿を見て「負けてられないな」と思い、火を付けられました。
初めて元村さんと鉢合わせて、元村さんの人格が変わる瞬間を目の当たりにするシーンがあったのですが、そこは音というか畑芽育として普通に驚いてしまったというか。言葉でうまく表せないくらいに、「豹変する瞬間、人間ってこんなふうになるんだ」っていうのをケロッと演じちゃうんですよ。それが本当にすごくて。
――竹内さんは豹変する瞬間がフォーカスされますが、畑さんは既に人格が変わってからのシーン替わりが多いかと思います。となると、竹内さんとは見せ方が変わってくるのでしょうか?
そうですね。音が初めて人格が変わって出てくるシーンも、どうやって気持ちを持っていこうかなと考えました。普段普通の役をやる時もよくやるのですが、シーンの最初の感情とかをブツブツ言うんです。そこで火種を付けて感情を湧き上がらせてから演じていたのですが、竹内さんはそれをシーンの最中にやってしまうので、「わ…!」って思いました(笑)。
――今回の役は、特に切り替えの難しさがありそうですね。
普段よりパワーがいるなというふうには思います。人格が変わるシーンじゃなくても緊迫したシーンが多く、役に入っているのでずっと背中の奥の方が凝り固まっているというか、ずっとドキドキハラハラしている自分がいて、パワーのいる作品でした。
――役者さんの中には、直前まで雑談していてもスッと役に入れる方と、現場入りの時から役に入っている方といらっしゃいますが、畑さんはどちらのタイプですか?
私は雑談とかギリギリまでするのですが、本当はあんまりしゃべりたくないんです(笑)。竹内さんも結構ギリギリまでにこやかにしゃべってくださるのに、(カメラが回ると)急に怖くなるので、その切り替えが本当にすごい上手というか、どこに本心があるんだろうと逆に怖くて(笑)。
お二人ともカメラが回っていないところですごくにこやかに和やかにお話してくださるので、ついついつられてそのままの感じでいってしまったりするんですけど(笑)。しっかり切り替えて臨めるように頑張りました。
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