だが、<街>は高城に懐いていない。じっとしていると足元に水たまりを出してくるし、人間に似せた“擬似住民”を作り出して威嚇してくる。住んでいる部屋には勝手に何本もチェーンロックをかけてくるし、寝ている高城の枕元に室外機を作り出して喉をガラガラにする。完全に嫌がらせである。
道路標識がニョキニョキ生えてくるようなVFXは、ずっと登場するわけではない。むしろ登場人物以外、誰もいない街をただ映している時間のほうが長い。それでも「巨大生物<街>」という設定と、時折聞こえる低いうなり声のせいで、なんでもない風景が脅威に感じるのだ。<街>が本気を出したら、人間なんてひとたまりもないだろうな、と。
そうした怖さが、先ほどの「嫌がらせ」のような小ネタで中和されると、<街>が憎めないやつに見えてくる。だって、路上に捨ててある空のペットボトルが<街>の老廃物だったりするのだ。そんなとこまで擬態しちゃうのって、もう逆にかわいい。ということは、うちの近所のゴミ集積所は<街>にとってトイレなのか、いやいや生物の上にトイレがあるのはおかしいか……と、いつもの街まで違って見えてくる。
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