江戸川乱歩の作家デビュー100年を記念し、虚実織り交ぜながら“知られざる江戸川乱歩誕生秘話”を描く土曜ドラマ「探偵ロマンス」(毎週土曜10:00-10:45、NHK総合)。濱田岳演じる若き日の江戸川乱歩・平井太郎と草刈正雄演じる渋い魅力の名探偵・白井三郎のコンビや大正時代の空気感の見事な再現、そしてアナログで華やかなアクションなどで話題となっている同作の第2話が1月28日に放送された。
今回はそんな「探偵ロマンス」の脚本担当・坪田文氏にインタビュー。脚本執筆の裏側や第2話で太郎を魅了するキャラクター・お百の着想秘話、作品に込めた思いなどについて聞いた。
ーー「乱歩の知られざる誕生秘話」を描く同作ですが、オファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか?
最初に制作統括の櫻井賢さんに見せていただいた企画書には、若き日の乱歩は名探偵である、日本初の名探偵と言われる男に弟子入りを志願していたっていう奇想天外なエピソードと、探偵活劇がやりたい、ということだけがズバッと書いてあって。これは大変な企画だぞと思いました。
オリジナルドラマはずっとやってみたかったものの、今までにない引き出しを開けてやらなきゃいけないジャンルで、期間も短いし...と迷う気持ちももちろんありました。でも、作家が探偵に弟子入りを志願し、その後探偵小説を誕生させる大きな存在になっていく、というストーリーが非常に魅力的で。こんなチャンスは二度とないだろうから、ハードルを1個越えるつもりで挑戦しようと思って挑みました。
ーーこれまでも江戸川乱歩作品に親しんでこられていたのでしょうか?
実は乱歩先生に関してはそこまで世代ではなく、有名な「黒蜥蜴」や「明智小五郎」シリーズに触れたことがあった程度でした。なので、私でいいのかな...という思いがあったのですが、櫻井さんから「その方がいい、今までにない乱歩を書いて欲しい」っていうお言葉をいただいて。
不思議な物語を書かれる方なので、当初「この人の心の内を見ていくのは難しいんじゃないかな」と思っていたのですが、資料を読んでいけば読んでいくほど「この人は何を考えているんだろう、この人のことをもっと知りたいな」と思うようになりました。特に大きかったのは、頂いた資料の中にあった乱歩先生の自伝的エッセイ「わが夢と真実」です。この中にあったエピソードはどれが真実でどれが遊び心かわからないけれども、これを自分のエッセイとして書く人はむちゃくちゃ面白いんじゃないか、っていうものが多くて。そういった断片的な情報を繋ぎ合わせて、“平井太郎”という登場人物として再構築していきました。