市川染五郎、“水”をテーマに日本舞踊をプロデュース

2017/06/15 21:15 配信

芸能一般 インタビュー

6月18日(日)まで、東京・国立劇場小劇場にて第一回 日本舞踊 未来座「賽 SAI」を上演中。本作は日本舞踊協会の3年ぶりの新作で、新たなシリーズの第1弾。

SAIとはSuccession And Innovation、すなわち継承と革新を意味し、「伝統をつなぎながら “今”こそ一番輝き、そして“未来”へと光を放つ公演でありたい」という願いが込められている。今回は水にまつわる4つの作品を上演するが、そのうちの一つ「水ものがたり」に出演し、「擽―くすぐり―」では演出を手掛けた松本錦升(市川染五郎)に、日本舞踊の魅力、作品の見どころなどを聞いた。

未来座「賽 SAI」の見どころを語る市川染五郎


日本舞踊の進化を感じてほしい


――なぜ“水”をテーマにされたのですか?

まずは、「水ものがたり」を作るというところから始まりました。水は過去にも、現在にも、未来にもある普遍的なもので、それを過去、現在、未来へとつなぐ日本舞踊にもメッセージとして込めることができるのではないかと思ったんです。

――時代を超えて、水と日本舞踊の表現するものが似ているということですか?

そうですね。水も時間と一緒で、止まることがないんです。液体であれば流れていくし、気化すればいろいろな所に飛んでいくし、凍れば溶けていくし…。

水と同じように、日本舞踊も古典というものはたくさんありますが、常に進化していくものだという希望と願いが(本作には)込められています。

――本作は新作で、今までと違う新しい挑戦をされているとのことですが…。

実は「水ものがたり」は「常磐津(ときわず)」の新作で、歌詞に現代語を使って作られています。「女人角田~たゆたふ~」は三味線奏者の本條秀太郎さんの作品で、以前に上演されているんです。

以前に上演されて作品を新作でやるのは初めてのことで、実際に作品を見せていただいたのですが、古典的ではない新たなものとして演じるのが新作の定義になるのではないかなと思います。新作というのは、やったことのないことをまっさらな状態から探すということだけじゃないということですね。

また、「当世うき夜猫」は上妻宏光さんの曲でやる(花柳)輔太朗さん演出の作品ですが、全員が現代の猫で繰り広げられる作品です。話を聞いていると、「どういう作品になるだろう?」と楽しみな感じです。

――パンフレットを見ると、「当世うき夜猫」には“移民の受け入れ”“降りかかる災害”など、割と最近の現代の言葉が使われています。これはあえて、使っているのですか?

そうですね。今生きている人間が作る作品というのが、新作の日本舞踊です。古典的な音楽を使ったから、新作ではないということではないし。新作には今の時代の出来事や体験が作品に反映されると思うし、「当世うき夜猫」は特にそれを強調してできた作品じゃないかと思いますね。