市川染五郎、“水”をテーマに日本舞踊をプロデュース

2017/06/15 21:15 配信

芸能一般 インタビュー

今も昔も、美しいものは美しい


「次につながるためにも、一人でも多くの方に見ていただきたい」とアピール撮影:阿部章仁


――日本舞踊の定義とは何ですか?

一番難しいところではあるのですが、あえて言うのではれば、リズムに合せて体を動かすということが唯一の定義だと思うんです。今回、僕が手掛けた作品「擽―くすぐり―」は25分間でへとへとになるまで踊りつくせば一つの作品になるのではないかというところから生まれました。楽しければ笑っていただいて、感覚で楽しんでいただければと。(楽しみ方は)人それぞれでいいと思います。

――歴史などの知識がないと日本舞踊を楽しめないのではと思っていたのですが、むしろ素人でもいろいろ楽しめる部分もあるんですね。

美的感覚というのは、昔とそうそう変わっていないと思うんです。今、小顔で足が長いのが格好いいとされていますが、昔も足が長いのが格好いいとされていました。

例えば“見得(みえ)”という決めポーズがあるんですけど、これは今もずっと格好いいものとして残っている一つの型です。だから、新作をやる時は格好いい“見得”じゃないと通用しないんです。それは古典をやっても同じなんですけど。だから新作を作る時は正しい“見得”を勉強し直します。新作をやる時はあえて古典の型を避けてということではなく、古典のすり足とか姿勢などを大切にしています。

――新作ですが、ただ斬新なだけではないんですね。

そういう時代もありました。洋楽を使って、着物を着て踊るみたいな。でも、その組み合わせだけではないと思います。

温故知新というか、古いものが新しいものだったりすることもありますし。それが今回の「水ものがたり」の「常磐津」だったり、「女人角田―」の俚奏楽だったり…。今回は、いろいろな色合いが入っているかもしれませんね。

――日本舞踊初心者の方が、入ってきやすいですね。

そうですね。ただ僕が新作を作る時は、僕が見たいものを作るんです。ある意味、お客さんを巻き込みたいという思いがあるので、見たことのない人、触れたことのない人に興味を持ってもらう思いで作ることはないですね。自分が見たことないから、創るしかないんです。

僕が面白いと思っていることをお客さんも面白いと思っていただけるといいんですけど、だいたい「変わったことをする人なんだね」と思われることが多いです(苦笑)。

それこそ、「スケートをはいて六法を踏んだら格好いいんじゃないかな」と思っていましたから、言っているだけの時には「何を言っているんだ?」って話でしたが、実際に「氷艶―」で実現しましたからね。「本気だったんだ」って、思っていただけてうれしいです。

――では、最後になりましたが本作の見どころをお願いします。

正直、この新作は第1回目ではありますですが、崖っぷちに立っている第1回目なので、皆さんに知っていただけなければ本当に次はないという公演なんです(苦笑)。たくさんの方に来ていただきたいですし、僕の作品「擽―くすぐり―」では全員で息をそろえて踊る人間のエネルギーというかパワーの格好良さを感じてもらいたいです。

そして、次につながるためにも、一人でも多くの方に見ていただきたいです。