NHKから民放へ転職 自身の悩み・経験生かし制作「しょうもない僕らの恋愛論」山本晃久Pの思い

2023/03/09 05:00 配信

ドラマ インタビュー

――毎回リアルタイム視聴や見逃し配信でご覧になった視聴者の皆さんから、SNS等で熱い反響を寄せられていますが、その様子をご覧になっていていかがですか?

やっぱり男性は拓郎の、女性は絵里の気持ちに共感すると思うのですが、皆さんの共感ポイントが僕の思っていたのとは違うところに反応してくれていて。

バー「ちゃらんぽらん」のマスター(嶋田久作)が毎回拓郎や絵里に的確なことを言ってくれるんですけど、「マスターの言ってることが正しい!」とか、拓郎の同級生で自称“ラブソングの帝王”柳(好井まさお)がアドバイスすることに「全然違うわ!」とツッコミが入るとか(笑)。

あと、拓郎がベトナムへの転勤が決まった同級生・宇崎(黒田大輔)と自宅でお酒を飲むくだりで、最初宇崎がたばこを吸おうとしたら拓郎が「換気扇の下で吸え」と言っていたのに、思い出を語りだしたら二人してリビングでたばこを吸いながら和気あいあいとしているシーンに共感されている方もいて。「こういうところに自分の思い出を重ねて見てくださってるんだな~」と、Twitterの反響などを見ていて感じました。


恋愛を描く上で重視したのは、男女それぞれの目線を確認すること

拓郎にとって絵里(矢田亜希子)は高校時代からの腐れ縁で気の置けない友人だが、絵里はある思いを抱えていた(c)原秀則/小学館/ytv


――今のお話にもありましたが、男性目線からしますと過去の後悔に苛まれ続ける拓郎の姿や、学生時代を懐かしむ大人たちの一言一言にグッと来てしまいます。そうした会話や描写について、脚本、演出の皆さんとは制作される上でどのようなお話をされていますか?

この企画をやるにあたって心がけたのは、男女両方の意見を聞けるようにしたいなということでした。原作自体が青年誌に載っている漫画なので、僕は40代の男性としてすごく共感できたんですけど、見方によっては「おっさんが昔を回顧する」ような、ノスタルジーに浸りたい時によく考える感じもしていて(笑)。

これを女性が見た時に「拓郎は何を夢見てるんだ?」となってしまうのは避けなきゃいけないと思って。なので「これは女性から見るとどう思いますか?」と質問して、原作よりも絵里の方の描写を厚くして、女性側の40代の生き方もちゃんと描かなきゃいけないなという話をずっとしていました。

そうした描写を描くにしても、男性陣の間では「おっさんのこういうところ分かるよね」って盛り上がっていた描写を、女性陣が冷ややかというか冷静に見ていることがあって(笑)。

逆もしかりで、「女性はこういう意見を持っているけど、男って実はそうじゃないんですよ」ってことももちろんありましたし。なので、恋愛観の部分などは結構制作陣でしっかり話し合って、一つ一つ確かめながらドラマを作っていきました。


40代男女の空気感を実に自然体で演じている眞島秀和と矢田亜希子(c)原秀則/小学館/ytv

――今お話されていた部分について、眞島秀和さんや矢田亜希子さんとも現場で意見交換などされていたと思いますが、お二人からは「こういう時男性はこうするよね」といった反応などはありましたか?

眞島さんは原作漫画含めて、(作者である)原秀則さんの作品が好きだったそうです。眞島さんご自身も演じる役柄と年齢が近いということもあって、しっくり来ていたみたいです。難しい役だとは思うんですが、ご自身の中で噛み砕いて現場に来てくださいましたし、監督にも「こういうことだよね?」と逐一確認しながら演じておられたのでズレもなかったです。

矢田さんは、ご自身が絵里とはまた違うパワフルな女性なので、「自分は25年間片思いするキャラではないけれど、昔の片思いを消化できなかったが故に自分の中で美化しちゃっている部分は理解できる」と仰っていました。

「25年間抱き続けてきた思いが成就することが果たして幸せなのかどうか」という部分も分かる気がすると仰っていたので、その辺りを意識しながら演じてくださっていたと思います。