頭を上げた進吉の顔を見て、杉下は目を剥いて酷く驚く。「そなた…」と言葉が出ない杉下に、進吉は笑ってうなずく。杉下は恐る恐る進吉に近づいて肩に手をやると、進吉は杉下の目を見つめて涙を浮かべる。
進吉は以前、別の名前で大奥に仕え、杉下は中臈となった彼の部屋子をしていた。しかし、吉宗と褥を共にしたあと大奥の制度に従い、手打ちを言い渡されたが、吉宗のはからいで内密に免れて町人として生き延びたのだった。
進吉が手打ちを免れたと知らなかった杉下は「よくぞ!よくぞ生きておった」と言って涙を浮かべて進吉をしっかりと抱きしめる。進吉も涙を浮かべながら「杉下さーん!」と応えて、抱き返す。
吉宗は久通(貫地谷しほり)に2人のことを「いかがであった?」と尋ねる。久通は笑って「泣いて抱き合っておりました」と報告すると、吉宗は「それは重畳」と満足そうに頷くのだった。
見ている方も吉宗と同じ気持ちでうんうんと頷けて、ほっこりとした気持ちになる。進吉と杉下の再会に感動し、サプライズする吉宗の粋な心遣いにも感動した。
◆構成・文=牧島史佳
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