翌2010年には映画「悪人」に主演。暗い陰を背負った主人公・祐一を演じ、それまでの明るくハツラツとした印象とは180度異なるミステリアスなキャラクターで新たな魅力を発揮した。この作品で初めての「日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を獲得していることからも、妻夫木がこの作品で体現した新たなキャラクター像が多くの映画ファンの心をつかんだことがわかる。
20年以上にわたってスクリーンで第一線の活躍を続けながら、ドラマでもたびたびヒット作を飛ばす妻夫木。40代を迎え、近年は日曜劇場でも立て続けに主演作をヒットに導いている。
現在ディズニープラスでも配信中の「危険なビーナス」(2020年)では、資産家矢神一族の中で起きた事件に翻弄(ほんろう)される、一家の義理の息子・伯朗役。魑魅魍魎(ちみもうりょう)うごめく一族の中で、持ち前の好青年ぶりが光った。
3月12日に最終回を迎えた日曜劇場「Get Ready!」では、天才的なオペ技術を持つ闇医者“エース”こと波佐間永介を演じた。報酬の額よりもその患者が“生き延びる価値があるか”を基準にオペをするかを決める冷淡なダークヒーローが、ラストで自身の“正義”を取り戻し、笑顔を見せる展開に、視聴者からも感動の声が上がった。その振り幅は、幅広い役柄を演じてきた妻夫木であればこそのものだった。
青春真っただ中の若者から陰を背負ったミステリアスなキャラクターまで、年齢とともに役柄を広げてきた俳優・妻夫木聡。
映画「ある男」で「日本アカデミー賞」受賞式のステージに立った際には、役作りを通して「『弁護士とはこういう役』『城戸はこういう人間』と思っていたのが、いい意味で崩れました。みんな『いろいろな顔がある』と腑に落ちた」と打ち明けていた。日本を代表する俳優になってもなお新たな気づきを経て成長し続ける彼の、さらなる歩みに注目だ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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