そして、お笑いライブのオーディション当日。何の準備も無く春日を従えて会場にやって来た若林。「何か自己アピールがあれば…」と言う審査員の言葉に、しばらく考えた後、突然立ち上がり、驚く春日を置いて1人でノープランで話し始めた。
「あのぉ…親父がとんでもないヤツなんですよ」と始まったのは、子供の頃に家族で広島風お好み焼きの店に行った時、“広島焼のそば抜き”を頼んで、「そんなメニューは無い」と拒んだ店員に大声でブチギレて、無理やり作らせた結果、「うまくなかった」と言った話。続けて、幼稚園の運動会で、父親が観覧席に玉入れの玉を投げ込んでいる若林を撮りながら「アイツ、ダメだな」とつぶやいた話をしながら、感情が高ぶり、「少なくとも親が言っていい事じゃなくないですか? 親だろうが誰だろうが人の事見下しちゃダメでしょ。どーなってんだよ!」と気づいたら怒鳴っていた。
審査員に「今のが言いたかった?」ときかれた若林は、「はい…。(一番熱を込められる話は)これかな、って」と答えて、審査は終わった。その夜のノートには、帰りに春日と食べた「お好み焼きが美味しかった」と書いた。初めて違う「幸せだったこと」が記された。
数日後、合否の電話がやってきた。結果はまさかの合格。若林は春日とお笑いコンビ「ナイスミドル」として初舞台に立った。
若林の芸人人生が「こっから」始まる。どん底で光が見えないクソみたいな日々が始まる。ブレイクするのはまだまだ先。そして、同じ頃、大阪でもがいていた山里亮太と出会うのは、それよりさらに先だ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部
※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」
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