豊が聞き返すと、穣は我に返り、子どもってすぐに風邪をひいたり体調が悪くなったりするから、約束していてもドタキャンするしかないと愚痴を言う。豊が仕方ないことだというと、穣は「仕方ないことなんだけど、そう思ってもらえないことが多い。そう言ってもらえると助かります」と返す。
種がやおら起き上がり出し抜けに「おなか空いた」と言う。食材が乏しく、豊の提案でレトルトのおかゆに溶き卵とカニカマを入れてアレンジすると、穣は豊の即席レシピに感心して、自分ももっとがんばらなきゃいけないと反省する。「でも、なんかときどき、すげぇどうでもよくなるというか、なんか疲れるなって」と宙を見つめて話す穣。
豊は思わず穣の頭に手をやって、ヨシヨシしてやる。穣が驚くと、豊はハッとして謝り、「穣くんは頑張ってるよ。いつも種くんのことを考えていますよね、穣くんのそういう気持ちがあれば十分だと思う」と慰めるのだった。
種の面倒を見るためになかなかままならないことに葛藤する穣の気持ちが伝わってきて切なくなる。そして、彼を慰めてとてもナチュラルに頭ヨシヨシする豊とヨシヨシされる穣にキュンキュンとさせられた。穣と豊の心がほんの少しだけ近づく姿に、見ているこちらもほっこりと心が温まるシーンだった。
◆構成・文=牧島史佳
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