【推しの子】世界トレンド1位も納得 スピード感たっぷり…手に汗握る怒涛のストーリーで濃密な時間

2023/04/28 08:10 配信

アニメ 動画 レビュー

【推しの子】第一話より(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

赤坂アカと横槍メンゴがタッグを組み、これまでにない新しい切り口で“芸能界”を描く意欲作「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか/TOKYO MXほか※ABEMAで地上波同時配信、ディズニープラス・DMM TVほかで見放題配信)がスタート。原作の時点で注目度の高い作品であり、SNSとは相性の良さそうな題材に加え、映像、音楽、ストーリーどれをとってもクオリティーの高い内容のおかげか、TOKYO MXで初回の『Mother and Children』が放送された4月12日深夜には、Twitterの日本・世界トレンド1位となる大反響を呼んだ。今回、音楽・アイドルを中心とした幅広いエンタメ事情に精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が、本作の見どころを独自の視点からレビューする。(以下、ネタバレを含みます)

初回からスリリングなストーリー展開


「どうやってアニメ化するの?」「B小町の歌をどう三次元化?」「アイ役をこなせる人はいるの?」そんな疑問をハイレベルでクリアしたこと間違いなし、しかもとんでもなくスリリングで手に汗握らせる、いや、手が汗だくになってもそのまま見続けたくなる作品となっていた。アニメ化の第1回は記念ということもあるのか、なんと90分! なかなかの長尺なのでのんびり、ゆったり見ようかと思ったら、とんでもない密度のまま高速展開が続く。音楽で言えばスラッシュメタルのすご腕バンドが立て続けに100曲ぐらい演奏して一気に立ち去るよう様なスピード感、怒涛(どとう)のストーリーテリングだ。

物語は次のように展開する。地方都市で働いている産婦人科医のゴローはアイドルグループ「B小町」のセンター、星野アイのファン。難病の少女・さりながアイに熱狂的に憧れていて、彼女からいろいろ話をきいたりDVDを見せてもらっているうちにハマったのがきっかけだ。さりなが亡くなった後、追悼の気持ちも込めて、さらに強くアイを推すようになる。ある日、16歳のアイが事務所社長と共にその病院にやってきた。彼女は双生児を妊娠していた。が、ゴローは出産に立ち会う前に、アイのストーカーらしき男に殺されてしまう。

【推しの子】第一話より(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

推しの子どもに転生


そしてアイは男女を出産。ゴローは男児・アクアに転生したのだが、女児・ルビーがまた、自分の上を行く“ママ”の強烈なファンで、しかもやたら詳しい。しかもふたりとも赤子なのにオギャーとかバブーではなくてしっかりした言葉でコミュニケーションをとるのだ。やがてアイは事務所社長夫人に子育てを頼み、芸能界に復帰。妊娠・出産を(秘密裏に)終えた彼女は、ますますアイドルとしての輝きを放って、さらに上昇を続けていくのだが、アイに悲劇が襲う。まさしく「清濁併せ持つ人間模様」そのものという感じ。以降の流れはキラキラしたアイドルの血を期せずして引いてしまった者が薄汚れた現実にどう立ち向かっていくか、その流れを問う。

しかし、登場人物のゴロー/アクアや、アクアのよき理解者となる映画監督・五反田泰志たちの語るセリフがいちいち、「名言集」に入れたくなるほどクールでかっこいいし、“リアル”だ。「役者ってのは3つある」という前置きから語られる看板役者、実力派、新人役者に対する監督(クリエーター)側の狙い。実に的確だ。「最高のウソでみんなを幸せにすること」を生きがい同然にしているトップアイドル・アイの、どこかでピュアなのか計算されているのか分からないがひとまずキュートな言葉たちと、がっちりコントラストを描いて、こちらの目や耳や心に迫ってくるのだ。

アイの悲劇の後、一気に月日が流れてすっかり美男美女の高校生に成長したアクアとルビー。「次の展開はどうなるのか、今すぐにでも知りたい」というところで憎いほど歯切れよく初回が終わった。「【推しの子】」は、癖になること間違いなしの春アニメだ。

◆文=原田和典

【推しの子】第一話より(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会