<らんまん>佐久間由衣“綾”と志尊淳“竹雄”にもドラマが…三者三様の視点を可能にする確かな演技

2023/05/02 06:00 配信

ドラマ レビュー

「らんまん」第22回より(C)NHK

連続テレビ小説「らんまん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。5月1日放送の第21回では、万太郎(神木隆之介)が植物学の道に進む覚悟を決めた。その過程を姉の綾(佐久間由衣)とお目付け役の竹雄(志尊淳)それぞれの視点からも味わえるのが本作の面白さ。“受け”一方ではない佐久間、志尊の演技がストーリーに奥深さを与えている。(以下、ネタバレを含みます)

「わしは峰屋を出る」万太郎、ついに決心


幕末から明治、そして激動の大正・昭和を舞台に、高知県出身の植物学者・槙野万太郎が植物学の道を情熱的に突き進んでいく「らんまん」。第5週「キツネノカミソリ」では、地元の名家である実家・峰屋を出て植物学の道に進むことを決めた万太郎の決断とその後が描かれていく。

第20回(4月28日放送)で、自由民権運動家の早川逸馬(宮野真守)や世界を知る中濱万次郎(宇崎竜童)との出会いを通し、自分が本当にやりたいことを見つめ直した万太郎。第21回では、綾と竹雄に「わしが今生、生まれてきたのは峰屋のためじゃなか。植物のため」「わしは峰屋を出るき」と決心を伝えた。

「おなごの身でも、好きなものは好き」伝わる綾の思い


明治の世に変わったとはいえ、まだまだ庶民の生活の中には旧体制の感覚が色濃く残る時代。跡取りとして育てられた万太郎にとって“家を出る”という選択は、普通なら選択肢にものぼらないほど難しいものだったはずだ。

だが綾と竹雄も、万太郎のあまりにも大きい選択にたじろぐことなく、「わかった。峰屋は私に任しちょき」「(2人が決意を悔やんだ時には)叱りますよ。こじゃんと叱りますき」と、それぞれしっかり受け止めた。

そして、「私は酒造りが好きじゃ。おなごの身でも、好きなものは好きながじゃ」と力強く峰屋を引き受けた綾と、「お2人は前だけ向いちょってください。後ろがわしがおりますき」と暖かく励ます竹雄。2人の言葉には、万太郎の決断を受け入れるだけでなく「で、自分はどうするか」にまで思いを巡らしたからこその決意がにじむ。それぞれの視点に立った人生のドラマを想像したくなる奥深さに満ちている。

その説得力を生んでいるのが、2人を演じる佐久間・志尊の演技力だ。