<スター・ウォーズ:ビジョンズ>世界各国のアニメクリエーターが紡ぐ“新たなSWの物語”…新鮮な魅力詰まった9作品

2023/05/08 07:10 配信

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「スター・ウォーズ ビジョンズ」シーズン2は、5月4日(木)よりディズニープラスで独占配信中(C) 2023 Lucasfilm Ltd.

スター・ウォーズ」の名ゼリフ”May the Force be with you.”(フォースと共にあらんことを)のMay the ForceとMay the 4thを引っ掛けて、スター・ウォーズの日となった5月4日から配信がスタートしたアニメーション「スター・ウォーズ:ビジョンズ シーズン2(VOLUME 2)」。2020年に配信されたシーズン1は、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」(以下、SW)を創造する際に黒澤明の映画をヒントの一つにしていたことから、日本のアニメーションスタジオに制作を依頼。「ジョジョの奇妙な冒険」や「ポプテピピック」の神風動画や、「夜は短し歩けよ乙女」「映像研には手を出すな!」のサイエンスSARU、「攻殻機動隊」シリーズや「天国大魔境」のプロダクションI.Gなど、日本を代表するアニメクリエイターたちがSWの新たな物語を生み出した。それから3年。今度はスペインやインド、南アフリカなど、世界各国のアニメクリエイターたちがオリジナルストーリーを制作。それぞれの国の特色が現れた9作品が誕生した。(以下、ネタバレがあります)

9カ国のスタジオがオリジナルのSWアニメを制作


シーズン1は日本のアニメーションスタジオのみだったが、シーズン2はスペイン、アイルランド、チリ、イギリス、韓国、フランス、インド、日本、南アフリカ(配信順)と多彩な国のスタジオが参加。シーズン1はほとんどが帝国の支配する世界が舞台で、ジェダイとシスが対決し、劣勢にも怯まずに奥の手で道を切り開いていく物語が多かった一方、シーズン2は自分自身との戦いをテーマにしているものが多い。スペイン制作の第1話「シス」や、アイルランド制作の第2話「悲鳴の地」、イギリス制作の第4話「だってママだもの」は、独立心の強いヨーロッパらしく、弱き心に打ち勝ち、自ら新たな道を見いだす作品となっている。

また、チリ制作の第3話「星の中で」、第4話「だってママだもの」、南アフリカ制作の第9話「アーウの歌」など、ストップモーション・アニメーションが多いのも特徴だ。日本はそこまで多くないが、イギリスの「ウォレスとグルミット」やスイス生まれの「ピングー」など、海外では世界的に人気の作品が多数存在するため、自然な成り行きだったのだろう。

ちなみに第4話「だってママだもの」を制作しているAardman(アードマン)は、「ウォレスとグルミット」やスピンオフ「ひつじのショーン」を制作しているスタジオ。SWにはこれまでレゴによるアニメはあったが、クレイ風やフェルト人形風のものはなかったので、新鮮味を感じさせる作品群となっている。

アーティスティックな作品が多いのも特徴


それぞれのお国柄を感じさせるのもシーズン2の面白さだ。インド発の第7話「ゴラクの盗賊」は、イラストからして独特だ。普段はドリームワークスの作品を制作したりしているので、今作はインドっぽさを意識しての絵柄だったのだろう。BGMにもインド特有の楽器が使用されている。インドのアニメを見る機会はなかなかないので、とても興味深かった。

また、芸術性の高いコミック“バンド・デシネ”のお膝元であるフランス制作の第6話「スパイ・ダンサー」は、布で形を作りながら宙を舞うダンスが実に美しい作品。客席を飛び回って軽やかにダンスを舞う合間に、帝国トルーパーたちに発信機を付けていくというアイデアも面白い。ストーリーでは帝国に引き離された親子の悲しき姿が描かれているにもかかわらず、どこか希望を感じさせる、不思議な魅力を持った作品になっている。

特にユニークさを感じさせたのは、スペイン制作の第1話「シス」だ。シスの元パダワンが師匠から逃げ、人里隠れた場所で理想の世界を追い求めている物語なのだが、世界観がとてもアーティスティック。シスに感情を飲まれる際の視覚効果が独特で、ドロイドやバイクの形状は独創的。シーズン1と異なり、シーズン2の作品群はさまざまな形のアニメーションがあることを示唆するのにピッタリの作品だ。執拗に追ってくる師匠に打ち勝ち勝利を手にするも、自分の土地を守るのではなく、さらに快適な家を求めてあっさり星を去るところもなんとも爽快だ。

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