計画が始まる前から玉砕し、一度は諦めかけた山里だったが、やはりどうしてもしずちゃんが欲しい。相方がいてもアタックする事に決めた。その為には、彼女の事をもっと知らなくてはいけない。そこで山里は、しずちゃんの周りをウロつき、会話を盗み聞いて好きなモノをリサーチしたり、彼女のネタを劇場に見に行って研究したり…と、ストーカーまがいの行動を繰り返す日々が続いた。
しずちゃんの友人から彼女の連絡先を聞き出すことに成功した山里は、意を決して彼女にメール。用件は書かずにケーキバイキングに誘った。黙々とケーキを口に運び続けているしずちゃんに、山里は彼女の好きな漫画やお笑いについて自分が好きなモノのように話して心を開かせ、自分たちは気が合うのだとアピールした。「こんなに気が合うなら、もっと早く話せばよかったね」と距離を縮めようとする山里。
すると彼女は「でも、東京行く前に話せてよかった」と告げた。新コンビで東京進出を決めていると知り、焦った山里は、「東京のテレビ局は若手を使わない方向だ。これからは出演オーディションも大阪でしかやらない、と東京のプロデューサーに聞いた」と、嘘八百を並べ立て、東京行きを思いとどまらせようとした。
そして、「山里・しずちゃん ネタ台本」と表紙に書かれたノートを出し、「この台本に未来を感じたら、オレとコンビ組んでくれませんか?」と、ついに本題を切り出した。ケーキを食べる手が止まったしずちゃん。彼女は、山里に告白されると思い込み、「それは絶対イヤだ」と思って、告白する隙を与えないようにケーキを食べ続けていたのだった。
「ずっと見てたよ。いっぱい見たけど、キミとなら面白い事が出来ると思って。コンビ組んでるけど、言うだけ言ってみよう、って誘ってみた。ルール違反だけど。ごめん」と、溢れ返る想いをマシンガントークで伝えた山里は、もう一度「この台本が面白かったら、明日の1時に公園に来てほしい」と言い、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
翌日。1時を少し回った時、しずちゃんが走ってやって来た。「コンビ解散してきてん。それで遅なった。ごめん」。彼女は息を切らしながら山里に告げた。“南海キャンディーズ”の誕生だ。山里は“成功への扉”を開くカギを手に入れた。
この後、彼らは大ブレイクするわけで、山里の読みは正しかった。山里が書いたネタが面白かった事もあるが、しずちゃんの存在感もブレイクの大きな要因だ。だが、山里は相方に対するリスペクトは消え、ピン仕事が増える一方の彼女に激しく嫉妬する。「あの子ばっかりじゃん!何もやってないのに」と悪態をつき、プライベートの旅行にまで文句をつける始末。明らかに見下した態度で、ネチネチとイジワルを繰り返し、それが数年間続いていくことになる。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」
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