【テレビの開拓者たち / 樋口卓治】売れっ子放送作家が「テレビもまだ捨てたもんじゃない」と思った番組とは?

2017/07/09 16:30 配信

バラエティー インタビュー

自分自身が家で見たい番組かどうかを大切にしているんです


「フルタチさん」(フジ系)も、樋口卓治氏が携わる数多くの番組の一つ。最近は「日本語とアナウンサー」「日本の方言」といった人気企画も生まれている©フジテレビ


──樋口さんは、現在も「ぴったんこカン・カン」や「中居正広の金曜日のスマイルたち」をはじめ、いわゆる長寿番組を数多く手掛けられていますが、何か秘訣のようなものはあるんでしょうか?

「一番大事なのは、スタッフが一丸になっていることでしょうね。『ぴったんこ』だったら安住(紳一郎)アナが、『金スマ』なら中居(正広)くんをどう生かすか、つまり、彼らが悔しいと思ったり緊張したり、本気で挑めるステージをどうやって作るか、それを考えるのが僕ら裏方の仕事で。みんなの中でそこのコンセンサスが取れていれば、戦い方も自ずと見えてきますから。

僕は、放送作家というのは、相方であるディレクターを“男にする”のが仕事だと思ってるんですけど(笑)、作家が『これだよね?』とアイデアを提示したときに、『そうそう!』とすぐに答えてくれるディレクターがいる番組は強いですよね。やっぱり、テレビ作りはチームプレーなんだなとつくづく思います」

──そんな中で、樋口さんが放送作家として最も大切にしていることは?

「大前提として、番組は“視聴者ファースト”でなければならないと思っています。とはいえ、僕もまた視聴者の一人なわけで、自分自身が家で見たい番組かどうか、という観点を大切にしているんですね。よく映画を見に行ったときに、予告編はよかったのに本編はイマイチだったってことがあるじゃないですか。そうならないように、視聴者の方々が『これは見てみたい』と思える“入口”と、見終わったときに『見てよかった』とか『ちょっと得をした』という気持ちになれるような“出口”と、その両方を番組の中にしっかりと作る。最初にワクワクさせて、最後は満足させる、そんな入口と出口をしっかり作ることを自分のルールとして課しています。

そのためには、今、どんなことが世の中で興味を持たれているのか、それが自分の感性と合っているのか、もしズレていたらどう調整していくのか、そういったことを見極める作業が必要なんですよね。いわば、時計が何分狂っているかを確認して時間を合わせるような作業を毎日やっているわけですけど、これがけっこう大変で。やっぱり若いころと比べると、ズレは大きくなりますからね。それは時代というより、自分自身が変化しているってことだと思うんだけど」

――そうした作業の中で、幸せを感じる瞬間は?

「月並みですけど、一つはやっぱり、視聴率ですよね。視聴率至上主義がいいか悪いかは別として、“高視聴率”という結果が出たときのうれしさは、やはり何物にも代えがたいものがある。栄養ドリンク以上に元気の素になります(笑)。そして、自分が手掛けた番組を見てくれた子供たちが、『自分も大人になったら、こういう番組を作る人になりたい』って思ってくれたら…。そんなことも考えたりします」