俳優、声優、YouTuberとして幅広いフィールドで活躍しており、WEBザテレビジョンで「月刊染谷WEBマガジン」を連載中の染谷俊之。彼の最新主演映画「パラダイス/半島」が7月21日(金)から公開される。そこで染谷をはじめ、共演の吉田美月喜、立川かしめ、稲葉雄介監督に集まってもらい、座談会を実施。その模様を前後編に分けてお送りする。まずは前編。作品の見どころについて話を聞いた。
──まずは稲葉監督にお伺いします。今回の作品を撮るにあたって、どんなことを伝えようと思ったのでしょうか?
稲葉:「パラダイス」がタイトルになっているように、「楽園」にいる人たちの物語です。その楽園というのが、もう一つのタイトルの「半島」なんです。作品の舞台である伊豆半島は、東京から陸続きですが、ちょっと隔絶されているというか、逃げ込める場所になっている気がします。そんな場所が「パラダイス」なんですけど、しかしながらずっと居続けることはできない。そうした儚さも含めた人間ドラマを描きたいと思いました。
──3人(染谷、吉田、かしめ)をキャスティングした理由はそれぞれあると思います。染谷さんとは映画『恋するふたり』(2018年)に続いてのタッグとなります。改めてどんな俳優ですか?
稲葉:本人を目の前にして言うのは、なんか恥ずかしいですね(照)。染谷さんの魅力は、簡単に言い表せないんですけど、孤高な感じと親しみやすさが同居しているところですかね。お芝居に関しては、気持ちを盛り上げたり、クレバーに頭で考えたりと、シーンに応じて切り替えることができるところがすごい役者さんだと思います。
染谷:褒めていただいて、ありがとうございます(笑)。
──吉田美月喜さんはどんな女優ですか?
稲葉:彼女を撮る人たちはみんな恐らくこの目をどう撮るか趣向を凝らすと思うんですけど、実際に撮影してみて、実は一番の魅力は彼女の中にある大らかさだと気付きました。ずっと見ていたくなります。あと動きがきれい。それを見てもらうために、今回は意識的に美月喜さんの演技にいろいろな動きを付けました。
吉田:監督は、私が出演した過去作品をすべて見てくださったそうで、それを聞いたときは本当に驚きました。そして褒めていただいて素直にうれしいです。
──立川かしめさんの本業は落語家。今回が映画初出演ということですが、どうでしたか?
かしめ:カメラの前で演技すること自体が初めてだったので、最初はドキドキでした。
──そんなかしめさんをキャスティングした理由は?
稲葉:彼の陽気な性格がいいと思ったからです。
かしめ:えっ、それだけ? 理由が薄くないですか(笑)。それに今回、全然陽気な役ではないじゃないですか!
染谷:慌てない、慌てない。これから褒めてくれるから(笑)。
稲葉:僕は元々、落語家・立川かしめのファンなんです。前座のころからずっと見てきたんですが、最初の印象はフォルムと声がすごくいい落語家さん。かつ、陽気なんですけど、一番好きなところは実は目が怖い。そこに創造力をかき立てられました。
かしめ:目つきが悪いってよく言われます。それって誉め言葉なんですかね(苦笑)。
──染谷さんから見て、かしめさんの演技はどうでしたか?
染谷:演技は初めてなんですが、落語家さんということもあり人前で話すことに関してはプロ。そういう場慣れしている一面もあって、なんだか不思議な感覚がありました。初めて出会うタイプの役者さんでしたね。
かしめ:落語のお客さんは寛容で、ミスを含めて楽しんでくれるんです。だから落語家はミスをしてもあまり気にしません。でも撮影の現場は当たり前ですが、セリフを間違えたら、話がつながらなくなる。だからめちゃくちゃ神経を使いました。
吉田:あるシーンで、かしめさん、私のことを間違えて「美月喜ちゃん」って呼びましたよね(笑)。
かしめ:「美月喜ちゃん、ひとり暮らしだよね?」って言っちゃって、普通に美月喜ちゃんの家に行こうとしているヤバい中年オヤジになっていた(爆)。でも監督が途中でカットをかけないから、まったく気付いてなかったです。なんで最後までやらせたんですか?
稲葉:監督としては、自分が書いたシナリオ以外のことが起こることを常に狙っているから。
染谷:いや、名前の間違いは普通にダメでしょ(笑)。
──吉田さんは年上の染谷さんとかしめさんに囲まれた現場はどうでしたか?
吉田:私、ひとりっ子で、ずっとお兄ちゃんが欲しかったんです。なので撮影中は本当に楽しくて、(役柄同様)姪っ子のようにかわいがっていただきました。そうした安心感があったため、私のほうもつい甘えてしまうような雰囲気が現場にはありましたね。
染谷:なら、もっと甘えてくれてよかったのに。美月喜ちゃんはしっかりしているから、僕もかしめさんも撮影中にフォローすることは全然なかったよ。
かしめ:美月喜ちゃんは本当の姪っ子のように、普段はかわいい存在なんだけど、撮影になると一瞬で女優になる。そのスイッチの切り替えがすごくて、正直、カメラが回っているときは僕のほうが依存していて、リードしてもらっていました。
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