竹中直人、サミュエル・L・ジャクソンが「ぎゅっと抱きしめてくれて…」“ニック・フューリー”への思い明かす

竹中直人にインタビューを行った撮影:ブルータス・シーダ

毎週水曜に配信中のドラマ「シークレット・インベージョン」(ディズニープラス)にて、竹中直人サミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリーの吹き替えを担当している。竹中が、 “アベンジャーズ”の創設者であるフューリーの声を初めて務めたのは、今から11年前。2012年の映画「アベンジャーズ」から担当している。このほどアフレコの感想やドラマの見どころについて、竹中に語ってもらった。(以下、一部ネタバレを含みます)

フューリーが地球を守るべく動き出す


「シークレット・インベージョン」はフューリーが初めて主人公を務める全6話のドラマ。アベンジャーズたちが鳴りを潜める中、フューリーは地球侵略を企てるスクラル人から地球を守るべく動き出す。しかし、スクラル人は人間に擬態することができる種族のため、見た目では敵か味方か判別不可能。誰も信じられない状況下で、フューリーは30年来の付き合いのスクラル人・タロス(ベン・メンデルソーン)と共に反乱軍に挑んでいく。

――2019年の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」以来の吹き替えとなりますが、あらためてフューリーを演じられたご感想をお聞かせください。

こんなに長くニック・フューリーを演じられるとは思っていなかったので、とてもうれしいです。今回のニックは、「アベンジャーズ」の時のように全身黒づくめのコーディネートにアイパッチ(眼帯)というスタイルではなく、毛糸の帽子に普通の服装。初めて奥さんが登場するなど生活感があって、いつものフューリーとは印象が違います。

老いを感じさせるシーンもあり、人間味に溢れています。「アベンジャーズ」で見てきたニックとは明らかに違います。でも特別に作ることなく演じました。

――今回の「シークレット・インベージョン」はフューリーが初めて主人公を務めるドラマになりましたが、それを聞いてどう感じられましたか?

主人公だから…ということは全く意識しませんでした。「アベンジャーズ」はもともと全員が主人公という作品です。一人一人に愛情を注いで丁寧に描いている。例えば、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)のラストにはヒーローが集結しますが、あれだけ登場したら誰かがかすみそうなのに、誰一人としてかすまない。脇役がいない、全員に愛情が注がれていて、そこがマーベル作品の魅力だと思いますね。

ただ、今回は出番が多いので、セリフは多いだろうな…と覚悟していました(笑)。それから、どんな物語になるのだろうと想像してドキドキしていたら緊迫感に満ち溢れたストーリーで、毎回ものすごい集中力が必要でした。アフレコが終わる度、ヘロヘロ(笑)。

「シークレット・インベージョン」より(C) 2023 Marvel

第1話からフューリーの右腕のマリア・ヒルの死に呆然


――アフレコはどのように行われたのですか?

毎週1話ずつ6週かけて収録しました。情報漏れを防ぐために毎回スタジオに入ってから台本を頂き、そこで初めて映像も見るんです。ですので、配信で見ている皆さんと同じようにびっくりしながら、先が分からない状態で吹き替えを演っていました。最初に驚いたのは、やはりマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)の死ですね。右腕としてずっと一緒にやってきたのに「え!?そんなっ!?死んでしまうの!?」と驚きました。こんなに緊張しながら見るドラマは、なかなかないと思います。

――しかもマリアを殺したのは、侵略軍の若きスクラル人リーダーのグラヴィク(キングズリー・ベン=アディル)が擬態したフューリー。すぐにグラヴィクだと判明しましたが、演じる際は実はグラヴィクであることを意識したのでしょうか?

いえ。見ている人はニックだと思っているので、特別意識はせず、ニックのままで演じました。あまり余計なことは考えずにね。今回はいつもの黒ずくめのニックではなかったのでどういった声の音色なのかと悩みましたが、ニックの表情を見つめながら自然に掴んでいきました。

今回のアフレコでは今までとは違うニックが体の中に入ってくるのを感じました。吹き替えをすると、呼吸も共にするのでちょっとした擬似体験ができるんです。サミュエルの中に入ってしまったような気分を味わえるんです。だから、吹き替えの仕事はロマンチックだなって思いますね。僕は子どもの頃から声優という仕事に憧れていたので、こうして続けられていることがとてもうれしいです。そしてニック役をまた演じられたらうれしいな…。

竹中直人撮影:ブルータス・シーダ