令和を超えても旅番組が愛されるワケ “素敵な観光地・温泉・宿”だけではない人気の秘訣

2023/07/27 17:00 配信

バラエティー

令和になっても“旅番組”が愛される秘密 美しい景色やグルメだけではない人気のポイント2023年 テレビジョン撮影

日々の喧噪を忘れるため、のんびりと過ごしたり、羽根を伸ばすためのグルメやレジャーを紹介してくれる旅番組。実際に旅行するきっかけとなるのはもちろん、見ているだけでも旅気分を味わうことができる。外出自粛もひと段落した昨今、魅力的な旅番組に共通する“ある特徴”を紹介しよう。

MCのカラーを引き出せるタイプの旅番組


いまお茶の間を賑わせている番組を見るにつけ、知名度やトークスキル以上に必要なのが“MCカラー”だ。実際に旅を経験したり、番組をけん引する立場にあるMC。彼らの特色が出ている番組は、「よくある旅番組」にはない独自の魅力を持っている。

たとえば「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(毎週土曜夜7:54-、テレビ東京系)などは、“人情すがり旅”と題しているとおり、出川が旅先で起こす化学反応を目玉にした番組。旅番組には付きものの地域住民とのふれあいだが、同番組ではそれを「移動するために充電させてもらう」という“旅をするために必要な条件”として設定しているのがユニークだ。

声をかけて挨拶する、グルメの感想を共有する、地域の歴史を教えてもらうなど、旅番組ではよく見かける温かい光景。旅先の地域に住む“人の魅力”が見えてくる大事なコミュニケーションだが、やはり芸能人相手ということもあって緊張する人も多い。しかし「充電させてもらえませんか?」では出川を“お願いする立場”につけることによって、地域住民との積極的なコミュニケーションを促している。

出川といえばリアクション芸のイメージが先に来るものの、最近ではゆるキャラ的な親しみやすいイメージを抱いている人も少なくない。そうした親近感と体当たりロケにくじけないタフさ、そして素人を上手に操縦“できない”素っ頓狂なようすが織りなす化学反応を、同番組はうまくバラエティに変えているのだ。

ほかに例として挙げるとすれば、「相席食堂」(毎週火曜夜11:17-、TBS系)だろう。同番組はMCであるお笑いコンビ・千鳥が現場に行かず、ゲストの旅にコメントするという珍しい方式を取っている。

これは千鳥の芸風と人柄をよく見ているからこその采配ではないだろうか。彼らは独特の世界観を持ち、クセの強いボケを鋭いツッコミがさばくというやり取りが人気のキモ。素人と絡ませてワチャワチャ感を出すよりも、「スタジオで好き勝手にボケ、ツッコミを入れる」形式の方が彼らの良さが引き出せると考えたのかもしれない。

“面白い旅バラエティ”の特徴として、「MCのカラーを大いに引き出す」というのは大事なポイントに思える。だがMCのカラーが深みを生んでいる番組は、なにもお笑い芸人がMCの番組だけではない。

お笑い芸人だけじゃない… ミュージシャンならではの盛り上がり


「一度は行きたい極上宿 小田井涼平のあい旅」(毎週木曜夜 8:00-9:00、BSJapanext)は、スーパー銭湯アイドル「純烈」の元メンバー・小田井涼平がMCを務める旅番組。旅の醍醐味といえば数あるが、なかでも満足度に大きくかかわる“宿”に焦点を当てた番組だ。

旅行く先は、タイトルにあるとおり「一度は行きたい」と思えるような豪華な宿がターゲット。なかなか比較検討しづらい極上宿のようすを詳しく伝えることで、「思い出に残る旅をするならここがいい」という目当てを見つけることができる。

ただ「あい旅」のユニークな点は、MCである小田井の軽妙なトークスキルと随所にはさまれる“歌”にある。先述したとおり、人気グループに所属していたミュージシャンである小田井。人との触れ合いが好きで、純烈を卒業する前から「旅番組をやりたい」という気持ちはあったようだ。

番組でも度々、道行く人へ気軽に話しかけたり冗談を言って笑わせるシーンが散見される。ある日のロケでは、乗合馬車で相席した夫婦を街で見かけて自分から話しかけに行くという場面も。芸能人らしからぬ気取らない仕草も、人気の秘訣かもしれない。

特にユニークなのは、彼がミュージシャンとしてのスキルを番組内で活かすことだ。満点の夜空が覗く温泉に浸かりながら1曲、大きく広いコンサートホールで高らかに一節、はたまたホテルに併設されるバーでバーテンとセッション…。

旅先のその場で生まれた気持ちを、惜しげもなく歌いあげる小田井。VTRに添えられたBGMではなく、生の現場で響く歌声は番組の色として強烈。純烈ファンはもとより、彼を知らない人から見ても番組を大きく印象づけるはずだ。

非日常を感じられる旅の景色を、お茶の間に届ける旅番組。旅行気分を味わえることから昔から人気を博し続けてるジャンルだが、令和のいまもなお愛されるのには理由がある。素敵な旅先の風景だけでなく、MCの人柄や言葉選び、歌声などにも注目しながら見てみると、旅番組に新たな楽しみを見出せるかもしれない。