番組Pが語るドラマ制作秘話や中村倫也のすごさ「何をやっても彼は成功する」<ハヤブサ消防団>

2023/09/12 10:00 配信

ドラマ インタビュー

番組Pが中村倫也主演「ハヤブサ消防団」について語る(C)テレビ朝日/「ハヤブサ消防団」第3話より

中村倫也が主演を務める「ハヤブサ消防団」(毎週木曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系)の最終話が9月14日(木)に放送される。その放送に先駆け、テレビ朝日プロデューサー・飯田サヤカ氏に直撃インタビューを行った。

「ハヤブサ消防団」とは?


同ドラマは、山あいの小さな集落を舞台に描かれるホラーミステリー。中村は、池井戸潤が自身を投影した主人公のミステリ作家・三馬太郎を演じる。

物語は、スランプ気味の太郎が亡き父の故郷、ハヤブサ地区に移住するところから幕を開け、穏やかな田舎暮らしを手に入れたはずの太郎が、地元の消防団に加入したことを機に、連続放火騒動や住民の不審死などの怪事件に次々遭遇。

田舎町という小さな異世界を舞台に、予測不能なストーリーが怒涛(どとう)のように展開されていく。

今回、飯田氏には「ハヤブサ消防団」の撮影現場の様子や制作側だからこそ感じる中村のすごさなどをたっぷりと語ってもらった。

太郎(中村倫也)(C)テレビ朝日


番組Pからの熱いコメントが到着


――「ハヤブサ消防団」のドラマ制作秘話を教えてください。

もともと池井戸潤さんとは、8年前に金曜ナイトドラマ枠で放送した「民王」(2015年、テレビ朝日系)というコメディー作品でご一緒させていただいていました。

池井戸さんとはさらにその6年前に仕事とは関係なしに、偶然ご飯へ行くタイミングがあり、その際に金曜ナイトドラマ枠の話になり、池井戸さんの方から「僕の作品なら民王が合うと思う」と前向きなお言葉をいただき、「民王」のドラマ化が実現しました。

池井戸さんとご縁ができ、「民王」終わった際には「またご一緒したいです」とお伝えし、池井戸先生もそれ以降、前向きに考えてくれていました。それから月日を重ね、「ハヤブサ消防団」という作品であの日の言葉が実現したという形です。

連載当初から、「ハヤブサ消防団」は面白いと感じていた作品だったので、池井戸さんには「テレビ朝日でやらせてくださいね」と話をさせていただき、2022年の単行本発売時にはすでにドラマ化の話は進んでいました。

――中村さんを主演として起用した理由や一番のポイントは?

この物語の主人公・三馬太郎というキャラクターは、原作から漂ってくるイメージとして、ひょうひょうとしたすごく人に好かれる気弱な兄ちゃんという印象でした。都会から来たばかりなのにすぐに田舎に溶け込み、その土地の住人に妙にかわいがられ、もみくちゃにされる太郎の姿が中村さんとかさなりました。

私たちの中で、太郎に対するファーストイメージが中村さんそのものでしたし、年齢は1歳だけ違いますが、「35歳三馬太郎」というキャラクターに中村さんの年齢もぴったりでした。また、中村さん自身エッセー(「THE やんごとなき雑談」[KADOKAWA])も書かれていて、そのエッセー自体も本当に面白いです。

本人は「そんなことないよ」と否定されるのですが、中村さんは本当に才能がある方で、作家のような雰囲気があります。そういった多くの点が太郎と重なり、オファーしました。

「ハヤブサ消防団」第2話より(C)テレビ朝日

――制作側から見た座長や俳優としての中村さんはどのような印象なのでしょうか?

一言で表すのであれば軽やかです。いい意味で全然力が入っていないです。肩の力が抜けているので、その分、楽しんでお芝居をされています。

連続ドラマの主演は、どんな方であっても大抵は重くなっていきます。その理由として、放送が開始すると、すぐにドラマのよしあしや視聴率の高い低いなどを含めた(周囲からの)評価にさらされることが、昔に比べるとすごく増えることがあげられます。

また、これは本当によくないなとは思うのですが、連続ドラマでは台本が最後までできていないところからスタートし、さらに台本の進みが遅くなってしまう現象に必ず陥ってしまいます。

こういったことがあると、俳優というのはもともと繊細な生き物であるがゆえに、わりとピリピリとし始める方が多いのですが、中村さんはピリピリすることもなく、いつも楽しそうに過ごしていますし、いい意味で余裕を持っています。

――お話だけでもその姿が想像できます。

中村さんは本当にめちゃめちゃ賢いですし、プロデューサーだといっても過言ではないのです。脚本のことも分かるし、もちろん芝居のことも分かっています。さらに、スタッフの動きをはじめ、撮影現場の全てを見ているので、目先のことにとらわれてしまうような視野狭窄(きょうさく)に陥ることがありません。

だからこそ、こちら側が恥ずかしくなってしまうこともあります(笑)。すべてが見えている中村さんは、制作側が至らない点もすぐに気が付いてしまいます。そういった点ではすごく手ごわい相手だなと思っていますが、上司にしたい方です(笑)。

「そこのバミリ(=舞台上で俳優の立ち位置や小道具の場所に目印を付けること)、外れてないよ」と気付くのはいつも中村さんです。全部を全部、拾い上げてこちらに言うわけではないのですが、「あ、この人は現場のこと全部分かっているな…」というのを中村さんから感じています。

「このシーンはこうした方がいいんじゃないの?」ということを提案してくださる時もあるのですが、それは主演の立場から「こうしたい」というのではなくて、全体を見て「こうした方がいい」と思い、提案をしてくださっています。なので、中村さんは、制作側からしたらやはり手ごわい相手です(笑)。

――空間把握能力に長けていらっしゃるのですね。

私よりもずっと年下ですけど、本当にすごいです。何をやっても彼は成功すると思います(笑)。