また、「silent」では主に紬と想の二人の関係について描いていたのですが、今作ではそれを4人でやってみようよ、と。生方さんが描き分ける4人をじっと見つめてもらえるような、愛すべき4人のキャラクターがさまざまな物語を紡いでいくドラマを目指しています。
4人の主人公については、「silent」と同じく当て書きです。とは言っても、多部さん、松下さんをはじめとした4人とは今回初めてご一緒するので、あくまでもイメージに基づいて書いています。なので、演じるご本人たちは“こんな性格じゃないよ”と思うかもしれないのですが、世間が感じるこの人がこんな役を演じたら面白いだろうなという4つのキャラクターにぴったりな役者さんが見事にキャスティングできたので、それも楽しみにしてもらいたいです。
――「silent」でもタイトルの意味について多くの考察がありましたが、今作の「いちばんすきな花」の“花”にはどのような意味が込められていますか?
花って、ものすごくたくさんの種類があって、さらにさまざまな色があるじゃないですか。その中で、「一番好きな花は?」と聞かれたとき、みんなの回答がバラバラになると思うんです。例えばガーベラが好きな人が何人かいるとしても、赤いガーベラが好きだったり、オレンジのガーベラが好きだったり、好みがすごく細分化される。つまり、好みがそれぞれ違っていて、いろいろな人がいろいろな思いを持っているんですよね。それが、好きという感情のある種の象徴に感じて、今回このタイトルを付けました。自分でもすごく気に入っています。
多部さん演じるゆくえのキャラクター説明に「『子どもの頃から二人組をつくるのが苦手だった』という思いを抱えている」という文言があるのですが、皆さんも、過去に似たような経験をしたことがあると思うんです。生方さんは、そういう忘れていた苦い気持ちというか、心の中にあるけど大事にしまっていたわけではない苦しい気持ちをさすうなせりふを書いてくるんですよ。それが生方さんにしか書けないせりふというか、彼女ならではの目線で書かれている。脚本を一緒に作っていく中でそういう部分を目の当たりにするたびに、すごい作家さんだなと思っています。