第11回では、家治とともに登場した五十宮。青沼の人柄に心動かされた様子の五十宮は、進んで席に座ると、「私も今日からここの教え子や。青沼先生、はよ講義始めてくれやす」と告げる。
その五十宮の言葉は一瞬で、青沼や講義部屋に希望の光をもたらした。そのシーンを見て、「ずっとこのまま平和でいてくれ!」と願ったが、うまくいかないのがこのドラマ。「女性は女性でつらいが男性も男性でつらい」というのが「大奥」なのだ。
第12回では、その五十宮の動きがどんどん怪しくなっていった。何かを隠しているような五十宮を青沼がじーっと観察していたり、五十宮が青沼以外の蘭方医を突然呼んだこともあり、視聴者からも「裏切るのだろうか」「怪しい」「何かあるよね…」と、五十宮を疑う憶測が飛び交った。
しかし、この憶測は大きな間違いだった。五十宮は病に侵されており、残り少ない命を懸け、青沼たちのためにとあることを秘密にしていたことが発覚したのだった。
体調を心配する青沼に、五十宮は「かなわんな…先生には」と諦めたようにほほ笑んだ。五十宮は自分の命が長くないこと、触れたら分かるほどのしこりがおなかにあることを打ち明ける。
青沼から教えてくれなかった理由を問われると、五十宮は「治ったらええけど、治らへんかったときには蘭方医学のせいやて言われかねへんやないか。あの部屋の者としては、それはごめんでな」と返す。御台所を助けられなかったとなれば、青沼も蘭学講義も無事ではいられないことを五十宮は知っていたからこその決断だったのだろう。
また、五十宮は御台所としてだけではなく、蘭学講義に通う一人の生徒、仲間として、青沼や蘭学を学ぶ仲間たちを思い、病を隠し続けたとも考えることができ、五十宮の優しさに涙腺は崩壊した。
さらに、五十宮は自分が姫(=家基)の本当の父親ではないことや、姫を自分の子としてくれた家治の気遣いに感謝しながらも、どこか寂しさやむなしさがあったことも明かす。誰にも言えない秘密を一人で抱えていた五十宮を思うと切ない思いでいっぱいになる。
青沼が大奥にやって来たおかげで、寂しさやむなしさを埋めることができたと話す五十宮は、仲間とともに過ごした日々を一つ一つ思い出すかのように穏やかな表情を浮かべていた。孤独を抱えて生きていた五十宮にとって、蘭学講義の時間は本当に幸せな時間だったのだと実感する。
やるせない思いに涙する青沼と、「ありがとうな、青沼。そなたのおかげや」と感謝の思いを伝える五十宮。五十宮が青沼を思うように、青沼も五十宮を思っており、身分を超えた友情を感じ取れるシーンとなった。
X(旧Twitter)には、五十宮が36歳の若さでこの世を去ったことを悲しむ声が上がる一方で、はかなくもけなげに生き抜いたその姿に、「これ以上の御台様はいない」「大好きでした」「丁寧に演じてくれてありがとう」というメッセージであふれていた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
※「趙民和」の「民」は正しくは「王へんに民」
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