宮藤官九郎「社会派コメディーで、考えさせる物語があってもいいんじゃないか」、劇場版「ゆとりですがなにか」誕生秘話を明かす

2023/10/27 08:30 配信

映画 インタビュー

ゴールがないドラマだからこそ「社会の変化が見えてくるんじゃないか」、老後編もありかも!?


――そもそも、6年も間が空いて続編を書くというご経験も、初ですよね?

初めてですね。続編的なものを(書き下ろしで)作るのって、これと「木更津キャッツアイ」(2002年TBS系、映画は2003・2006年)ぐらいだと思うんですが、「木更津」は岡田准一くんが演じたぶっさんって役が死んじゃうっていうゴールが最初に決まっていたから、無理して続けても、死ぬまでを延ばすか、死んだ後を描くしかないじゃないですか。それ両方やっちゃったし。でも「ゆとり」は前回スペシャルドラマをやった時も「ゴールがないドラマだな」って思ってたんです。ゴールを決めてまとめなくてもいいし、彼らがいる限り話が続いていくようなタイプの作品だなって。だから定点観測みたいに、一定の期間を置いてやることで社会の変化が見えてくるんじゃないかと思っていました。

あと、演じる彼ら3人がすごく仲が良くて、それぞれの役を演じることに思い入れを持ってくれているから「続けたい」って気持ちが伝わってくるし、現場もそういう気持ちだし、僕も「だったらこんな話が」って思いついていった感じですかね。6年経って、変わってたほうが面白いところと、変わっていないほうが面白いところ、両方あると思います。

――その間のキャストの皆さんの成長、変化も作品に落とし込んだりしましたか?

役に戻った時の瞬発力なんて、柳楽くんだったらまりぶが憑依したときの勢いみたいなのは「これこれ!」って思うし、それぞれ役割がハッキリしてきましたね。3人とも同世代で、今や全員主演をバンバンやっているわけです。他作品のキャスティングでもこの3人の名前はよく挙がるんですよ。実際僕も、他でも一緒に仕事しているし(岡田とは2023年の映画「1秒先の彼」、松坂とはNetflixの配信ドラマ「離婚しようよ」ほか)。そんな3人が戻ってくると、ただ続編やってるだけなのに、ちょっとスペシャル感ありますよね。責任も3分の1になってるから、いい感じで「3人から生まれるもの」を毎回やっていけるといいですね。その先は……衰え、老いみたいなのをもしテーマにやれるなら、それがアリなら、本当に面白いなと思います。

――完成した映画をご覧になっての感想は?

連続ドラマを観ていない人に対して、ささっと挿入される回想シーンがちょうどいい具合で補足してくれていて、水田監督の配慮だと思うんですが、さすがにうまいなと思いました。この映画だけを楽しむ人にも、山岸の頭おかしい感じも十分出てるし(笑)、「あいつが今はこんなにまともになったんだな」って分かるようになってる。あと、僕が一番楽しみにしていたのはハロウィーンのシーン。本当にケガしている人がいるのに、人が多すぎて相手にしてもらえないところ。撮影は大変だろうと思っていたけれど、思った以上の仕上がりになりましたね。

木南さんの韓国語も素晴らしかった!あんなに上手にしゃべってくれるんだ!って。笑いの間とかコメディーセンスも、あのチェ・シネ役は彼女で間違いなかったなと思いました。正和の妻・茜役の安藤サクラさんは、こういうセリフを書いたらこういう風に言ってくれるかな、こういう風に言ってくれたらうれしいなっていうのを全部確実にやってくれたましたね。お陰で最後はちゃんと夫婦の話に戻って行けました。山路の元カノ・佐倉悦子(吉岡里帆)さんも、スペシャルドラマではあまり登場できなかったので、今回お願いしてちゃんと出てもらえて、最後に出番が来るようにしたんですが、あそこもうまくいってよかったです。