ドラマ主題歌「アイノロイ」をリリースした矢井田 瞳 「苦しさもあるけど、乗り越えたらまた楽しい乾杯ができる、そう思うと前に進む勇気が湧いてくるんです」

生きてきて、初めて逃げるという選択肢を取りました

ドラマの主人公・伊沢ゆりあ(菅野)は、穏やかな日常を送っていたが、夫が突然倒れたことをきっかけに、彼の信じられないような数々の秘密が明かされていく。それでも、彼女は現実を受け止め、前向きに進もうと奮闘しようとする。もし仮に、自分のキャパシティーをはるかに超えるような出来事に巻き込まれたときはどう対応するのかと矢井田に聞くと、少し考えてからゆっくりとこう話し始めた。

「実は、自分で処理しきれない大きな問題を抱えたことがありました。そのとき、どうしたかというと…生きてきて、初めて逃げるという選択肢を取ったんです。そのことが起こる以前の私は、逃げるのは弱いことだ、悪いことでダメなことだと思っていたんです。もちろん、すぐに逃げ出すのは考えものですが、あのどうしようもない出来事が起きたとき、逃げる選択肢を選んで本当に良かったと思います。もし、何とかして解決しようと無理をして逃げずにずっと向き合い続けていたら、多分、自分ごと壊れていたんじゃないかなって思うから。

そんなふうに言うと、私の毎日が波乱万丈みたいに思われそうですが、どちらかといえば穏やかで感情的にも波は小さい日常を送っていると思います。『良かったな』とか『うれしいな』という気持ちはちょくちょく感じられるし、恵まれているなって。たとえば、この『アイノロイ』ができたときに、みんなで良かったねって拍手をする瞬間は、世の中に新しいものが１つ生まれたという感激でいっぱいになります。音楽を作り続けても変わらないのは、そうしたゼロから何かを生み出せる喜びです。ゼロイチの魅力は今も色あせることはありません」