北野武、“戦国時代の男色”描いた新作映画『首』を語る「ドロドロした男同士の関係とか裏切りとか…」

2023/11/15 19:40 配信

映画 会見

記者会見に登場した北野武監督※提供写真

北野武監督が、11月15日に都内で開催された「日本外国特派員協会 記者会見」に登壇。11月23日(金)に公開される新作映画「首」にまつわる話題に加え、現在手掛けているという次作についても明かした。

綾野剛が役作りとして荒井監督を観察


映画「首」は、北野監督が構想に30年を費やした戦国スペクタクル超大作で、今まで誰も見たことがない「本能寺の変」を壮大なスケールで描く。監督自らビートたけしとして「本能寺の変」を策略する羽柴秀吉を演じ、織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島秀俊、狂乱の天下人・織田信長を加瀬亮がそれぞれ熱演する。

天下統一を掲げる織田信長(加瀬)が他国との激しい戦いを繰り広げる中、家臣の荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こして姿を消す。信長は羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島)ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長(大森南朋)と軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さずかくまう。村重の行方が分からずいら立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。

記者会見では、北野監督が「『本能寺の変』を中心とした物語なんですけども、大河ドラマなどではかっこいい役者を使って歴史的にきれいごとを並べたような戦国の物語を描くのですが、男同士のホモセクシャルとか絶対に描かない。戦国時代の男色というのは『その人に命を懸ける』という意味での男色であって、そういった部分を含めた戦国時代のドロドロした男同士の関係とか裏切りとか、いろんなことが同時に起こったことでああいう事件が起こったということ描きました」と告白。

また、秀吉役について「監督一本でやりたい感じもあったんですけど、制作会社からの『たけしさんが出ないと海外とかに宣伝しづらい』ということがあって、『じゃあ、出るよ』となったんです。それで、出るとなると『やっぱり自分がやりやすいのは秀吉だな』と。お笑い芸人を戦国武将になぞらえた本とかでは大抵俺が秀吉なので、そういう(世間の)イメージもあって、秀吉がやりやすいかなと。あと、ストーリーの陰の部分での悪人をやっているので、同時に監督をやる時に離れて他人の芝居を見られるという2つの理由から、(自然と秀吉を演じることに)そうなっちゃったなという感じ」と明かした。

シリアスなこととお笑いというのは表裏一体


そんな中、監督業と芸人との切り替えについて聞かれると、「シリアスなことと“お笑い”というのは表裏一体で、“お笑い”は悪魔だと思っているんです。結婚式とかお葬式とか、みんなが緊張するようなところに“お笑い”は必ず忍び込んできて、“お笑い”に持っていってしまうという。暴力映画もそうで、すごくシリアスなシーンを撮ると、同時に(“お笑い”という)悪魔が忍び寄ってきて、フィルムでは流さないけど現場では大笑いするということがいっぱいあるんです」と語り、「今度作ろうとする映画は『暴力映画における“お笑い”』というテーマで、今制作に入っています」とコメントして会場を騒然とさせた。

続いて、次作の詳細について聞かれ、「パロディーを“お笑い”でやる場合、元の映画はかなり有名なものから持ってくるのですが、(逆にいえば)ヒットした映画じゃないとパロディーにならない。だから、自分が考えているのは、前半を第一部として暴力映画を撮って、それと同じキャスティングとストーリーでパロディーを第二部として流してみるということを今やっています。なかなか難しいこともあるけど、『これをやりたい』というものにどうにかなりそうですね」と打ち明けた。

◆取材・文=原田健