民放公式テレビ配信サービス「TVer (ティーバー)」が、初のオリジナルドラマ「潜入捜査官 松下洸平」の本編全5話を一本にまとめたコンテンツとして配信を開始した。年末年始にイッキ見したい本作の注目ポイントを紹介する。
2023年9月に全5話で配信されたTVer初のオリジナルドラマ「潜入捜査官 松下洸平」は、芸能界を舞台にリアルとフィクションが入り混じるサスペンスコメディ。俳優やアーティストとして大活躍の松下洸平が実は警視庁の潜入捜査官で、とある大物俳優の疑惑解明のために任務として15年前から芸能界に潜入していた、という設定でストーリーが展開される。
主演の松下はもとより、出演陣のほとんどが“本人役”で登場。さらには在京民放5局が制作協力として参画しており、「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)、「あざとくて何が悪いの?特別編」(テレビ朝日系)、「ラヴィット！」(TBSテレビ系)、「緊急SOS！池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレ東系)、「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)の5つの人気番組に“潜入捜査官の”松下がゲスト出演し、通常の番組として放送されるという、異例づくしのドラマとなった。
第1話の配信時より注目度が高く、関連番組を含む再生数が700万回を突破した本作だが、何よりも松下の“愛され力”なくしては成立しなかっただろう。ドラマの設定と同じく15年前の2008年より、歌いながら絵を描く「ペインティング・シンガー・ソングライター」として活動をスタートさせた松下。まもなく俳優としてもデビューし、舞台を中心にその演技力を磨き続けた。そして、2019年にNHK連続テレビ小説「スカーレット」にヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の夫となる八郎を演じるや否や地名度が急上昇。視聴者の間で“八郎沼”という言葉が生み出されるほど、観る人の心を奪い去っていった。さらに2年後、「最愛」(TBS系)で主人公の梨央(吉高由里子)を支える元彼で幼馴染の大輝を演じると、その人気は不動のものに。今や常に最新作が待ち望まれる俳優だ。
バラエティ番組にも多数出演しており、2021年には「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)内の人気企画「グルメチキンレース ゴチになります！」のメンバーとして活躍し、様々なゲームに全力で挑む姿や他のレギュラーメンバーとの息の合ったかけ合いを見せてくれた。何事にも一生懸命で、その芝居からも真摯で誠実な人柄がひしひしと伝わってくる松下。一方で親しみを感じさせるような“隙”もあり、人を引き寄せる魅力を持っている。松下洸平という本人の名前を冠した作品が制作されたのは、そういう愛され力の賜物なのではないだろうか。
ドラマでは、松下のリアルな俳優人生がフィクションの中に織り交ぜられており、ファンだからこそ分かる小ネタも多数あって細部まで見逃せない。また、セリフの中で「ギリギリ芸能界に入れそうだが、決して日の目を浴びることがなさそうなルックス」と言われてしまったり、「全力!脱力タイムズ」の収録後の反省会になぜか呼ばれ、MCの有田哲平にダメ出しを受けつつ、ハリウッドザコシショウの“誇張モノマネ”に挑戦させられたりと松下への愛あるいじりも炸裂している。
一方、くすりと笑える場面も多いが、それだけじゃないのが本作の面白さ。コメディとシリアスのバランスが絶妙で、特に潜入捜査官である松下とメキシコマフィアの幹部と噂される大物俳優・佐藤浩市が対峙する場面は毎回、緊張感が走る。特に最終話で描かれる直接対決は、二人の名演もあいまって手に汗握る展開となった。
潜入捜査のために俳優という仕事を利用した松下と、役作りのために裏組織に潜り込んだ佐藤。対立する立場にありながら、互いに“表”の顔と“裏”の顔を使い分けている彼らは「どちらが本当の自分なのか？」というジレンマを抱えている。それは日々、色んな役になりきっている俳優なら誰もが一度は直面する課題なのだろう。ゆえに、ドラマで2人から繰り出される台詞はどこかリアルで血肉が通っている。リアルとフィクションが交錯し合う混沌の中でこそ生まれる、心震える瞬間にぜひ立ち会ってほしい。
松下が所属する事務所の先輩である古田新太のゆるい存在感や、「やんごとなき一族」(フジテレビ系)で共演した馬場ふみかのヒロイン力、本作で役者デビューとなる新人女優役・堀川梨心の初々しさなど、周囲を固める登場人物の演技や松下とのかけ合いも見逃せない本作。一周しただけでは気づけないくらい見どころが満載で、何度も見返したくなる作品だ。ぜひ一度観た方も今回の機会に本編全5話をイッキ見しよう。
■文＝苫とり子
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