――実写とアニメの制作は同時進行だったんですか?
最初に出水ぽすか先生がキャラクタ―デザインを上げてくださって、それを基にアニメと実写のデザインを作っていきました。衣装は実写が先で、それに合わせてアニメのほうを修正。撮影自体も実写が先で、2022年の8月から12月まで5カ月かけて撮りました。実写の撮影が終わった頃に1話の絵コンテが上がって来たという感じ。だから、実写にアニメを合わせてもらったということが多かったと思います。
――キャスティングで意識したことは?
日本でオリジナルもの、しかもメジャースタジオで映画を撮るとなったら知名度や人気を優先させられることが多いんです。でも、そうではなくて役に合っている人を選びたいと思っていました。この作品だからこそできるキャスティングをしたいなと。純粋な興味として森田(剛)さんとマッケン(新田真剣佑)が戦うところを見たいなって。絶対カッコよくなるじゃないですか。そういう自分が見たいものや面白そうな組み合わせを考えながら皆さんにオファーしました。アニメの声優さんも同じです。
あとは「ウーパナンタ人」という日本人ではない異世界の人たちが出てくるので、SUMIREさんをはじめナショナリティがあいまいな感じに見える方たちを選びました。
――1人1人のキャラクターがとても個性的ですよね。
ドラゴン乗りの少年・タイムを演じた奥平くんはカラコンを入れていたのかな? 異世界の「ウーパナンタ」は島が浮いているから高度が高い設定。寒いと思うからちょっとチベットの人をリファレンスにして頬を赤くしてみました。そういうリアリティーをプラスしたことによって、表情などで幼さみたいなものも強調できたような気がします。
――他にも工夫した点はありますか?
戦う時に使う道具は「ウーパナンタ」の鉱物を削り取って作った剣にしようと考えて。普通の剣よりも厚みがあるものにしました。
剣と剣がぶつかった時の音もいわゆるカキンという聞き慣れた音ではなくてガリガリみたいな重い感じの音に。どうしても固定観念で剣と剣がぶつかった時の音はこれだよねって考えがちだけど、そういうものは一切振り払ってしまおうと。それは脚本作りや演出の面でも意識しました。
――撮影中、苦労したことはありますか?
オリジナル作品ということもあって、何かここはうまくハマっていないなと感じて脚本を書き直したり。いろいろ修正しながらの撮影は大変でした。
――ストーリー展開やセリフがしっくりこなかったということですか?
セリフもそうですし、意外とドラマが描かれていないと感じたり。どうしても後半になると説明が多くなってしまうんです。その説明をどうやって省いたらいいのかとか。全8話なので途中で辻褄が合わない部分も出てきたりして。撮影しながら物語を再構築していくオリジナルならではの難しさがありました。
実は、当初1話は全編アニメで2話から実写になる予定だったんです。それだと設定を飲み込めないまま物語が進んでいくので視聴継続してもらえるのかどうかという問題があって。結局1話と2話は実写とアニメを混ぜた編集に。そうやって、臨機応変に作れるところはオリジナルならではですし、やっていて面白いところでもありました。
――劇中ではナギとタイムが運命的な出会いを果たしますが、萩原監督にとって人生の転機となった“運命の出会い”は?
プロデューサーの山本さんとの出会いは大きかったと思います。今回もサウンドスーパーバイザーとして携わっていただいた浅梨(なおこ)さんから2017年頃に紹介されて、一緒にいろんな企画を考えてきた関係。年齢も一緒で、自分にとってはすごく刺激になるような存在なんです。今回の作品も、山本さんがいいタイミングでディズニーに入られたからこそ実現した企画。僕にとっては大きな経験になりました。
同じように、学生時代から切磋琢磨してきた間柄である藤本も大事な存在。大江さんや川原さん、そしてプロデューサーの伊藤(整)さんとご一緒できたこともうれしかったです。
――ちなみに萩原監督がクリエイティブな仕事をやってみたいと思うきっかけになった映画はありますか?
当時は全く気付いていなかったと思うんですけど「ジュラシック・パーク」(1993年)を劇場で見た時に受けた衝撃はすごかったです。1800年代にリュミエール兄弟の「ラ・シオタ駅への列車の到着」で、蒸気機関車が走ってくる光景を見て驚いた人たちと同じ感覚というか、あれを見たことで恐竜とかに対する思いが強くなって。それが今回の劇中に出て来るドラゴンにつながっているのかなと思っています。
◆取材・文=小池貴之
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