後日、一緒にご飯を作ろうとする史朗を賢二は呼び止め、「昨日の話。シロさん、遺言書作って。それで俺、シロさんの遺産受け取るよ」と言い、「シロさんの俺への気持ちだって、分かったから。ありがとう」と続ける。
史朗は「俺がお前と死ぬまで一緒にいるかって話したけど、結論からいうと、やっぱり一緒にいるとは断言できない。この先俺たちに何があるか分からないから。でも、俺、これだけは思ってるんだ。俺の人生で俺の遺産譲ろうなんて思う相手は、おまえぐらいだ。ロマンチックな答えじゃなくて悪いな」と語った。賢二は「ううん、最高にうれしいよ、シロさん。ありがとう」と史朗の気持ちを受け止め、史朗は切り替えて「さ、飯作るか。あと、遺言書もな」と笑った。
夕食を作りながら史朗は「あのな、ケンジ、もしもこの先、俺たちが別れることになったとして俺が死ぬとき、お前が誰か別の人と暮らしてても、それはそれでいいんだよ。俺はお前が幸せなら」と心の中でつぶやく。
史朗の目線に気付いて、賢二が不安そうに「ん?」と聞くと、史朗は笑ってごまかす。すると賢二は何かを察して「一緒にいるよ」という。史朗が驚いて賢二を見ると「俺は死ぬまでシロさんと一緒にいる。死んでもいる」と笑うのだった。
史朗がしっかりと賢二への深い愛を抱えていることに感動していると、賢二の方はそれを見透かすような重い愛を吐露し、心が震える。2人が互いを思い合う巨大感情に熱い涙があふれた。
◆構成・文=牧島史佳
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