「SAND LAND: THE SERIES」(ディズニープラス「スター」オリジナルシリーズ)が、3月20日に世界独占配信がスタートした。劇場版公開時、鳥山明さんらしい胸熱ストーリーとキュートなキャラクター、躍動感あふれるアクションや戦車でのバトルシーンなどが話題となったのも記憶に新しいところ。その劇場版の未公開シーンや原作の名シーンを追加した「悪魔の王子編」と、鳥山さんが本シリーズのために考案した新たな物語「天使の勇者編」を、前者が1話から6話、後者が7話から13話という構成で配信。3月20日に配信されたのは「悪魔の王子編」全6話と「天使の勇者編」の始まりとなる7話の7エピソードだ。新キャラが登場する「天使の勇者編」も見応えがあり、いわばイントロ部分の第7話だけでも「すっげーワクワクすっぞ!」という展開。何事も“始まり”が重要ということで、まずは「悪魔の王子編」の前半について振り返ってみたい。序盤から胸アツ、ワクワクするシーンの連続で、すっかり童心に帰ってしまった。(以下、ネタバレを含みます)
「SAND LAND」は、世代や国境を越えて愛され続けている「DRAGON BALL」「Dr.スランプ」の生みの親である鳥山さんの珠玉の短編を原作に、「機動戦士ガンダム」や「ラブライブ!」シリーズといった多くの人気作品を手掛けてきたサンライズ、TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのオープニング映像や「ポプテピピック」などで注目されたアニメーションスタジオ・神風動画、ハイクオリティーな3DCGアニメーションを得意とするANIMAの3社による制作で、2023年の夏に劇場版アニメーション映画として公開された。
物語の舞台となる“サンドランド”は、その名前の通り、砂漠が広がっている世界。魔物も人間も水不足に困っていて、国民は国王が販売する高価な水だけを頼りに生活していた。井戸の水も尽きようとしている時、アクションを起こしたのは正義感の強い保安官のラオ(CV:山路和弘)だった。彼は、青い鳥の姿を見つけた。その鳥は水のあるところに存在していることから、うわさで聞いたことのある“幻の泉”があるはずだと確信。貴重な水源を探しに行こうと決めたが、人間だけでは道中不安が多いので、魔物たちに協力してもらおうと考えた。
ラオが持参した貴重なゲーム機につられる形で、悪魔の王・サタン(CV:大塚明夫)の息子ベルゼブブ(CV:田村睦心)が同行することとなり、全然乗り気ではなかったがベルゼブブに指名されてお目付役の魔物・シーフ(CV:チョー)も一緒に行くこととなった。ベルゼブブは少年のように見えるが、年齢は約2500歳で、シーフはそれよりもちょっと年上らしい。長く生きているので、正確な年齢は本人たちも分かってないという。
悪魔の王子と魔物、人間の保安官という変わったトリオでの旅が始まると、ラオの車をベルゼブブが運転したがったり、それを見て乗り気じゃなかったシーフも運転がしたくなり、子ども同士でオモチャを奪い合う感じで張り合う姿は悪魔や魔物とは思えないくらいほほ笑ましい。
道中、話をする中で、魔物のイメージが人間の間違った印象によって作られていたこともラオは知ることとなる。魔物は“ワル”だけど、人間のように“殺す”ことはしない。実際、ベルゼブブとシーフも力が強かったり、人間にはない特殊な能力を持ち合わせていたりするが、殺すことは一切行っていない。逆に戦争の時のこととは言え、ラオは人を殺してしまった過去を持っている。
旅を続ける中で、大きな魔物に襲われたり、国王軍に狙われたりするが、そういう修羅場をくぐり抜けていくごとに、ラオはベルゼブブとシーフとの信頼関係を築き、絆のようなものも芽生えていくのを感じていた。人間が正義で悪魔や魔物が悪。そんな固定概念を覆していく場面も多く、“一つの出来事も別の視点から見ると違って見えることもある”なんてことにも気付かされる。
保安官ラオは秘密というか謎の部分が多い人物だが、物語が進むにつれて、その秘密や過去にあった出来事なども明かされていく。ベルゼブブとシーフは、それぞれの持つ能力が少しずつ明かされていったり、他の人間たち(国王軍や反乱軍)から恐れられている存在だということも分かってきたりする。そうやって明らかになる部分が増えていくことで、それぞれのキャラクターの魅力がより伝わり、見ている側も彼らに引かれるようになっていく。
「悪魔の王子編」の4話まで見ていく中で、3人のいろんな部分が明らかになりつつ、彼らを追う、国王軍のゼウ大将軍(CV:飛田展男)、ゼウ大将軍に次ぐ地位にいるアレ将軍(CV:鶴岡聡)とラオとの関係性も見えてくる。
3月1日、原作者の鳥山さんが急性硬膜化血腫のため逝去されたことが同月8日に公表され、日本だけでなく世界中から悲しみの声が届けられた。「SAND LAND」も鳥山さんの世界観がたっぷり感じられる作品で、「天使の勇者編」にはレジスタンスのアン(CV:小松未可子)と高慢ちきな天使・ムニエル(CV:村瀬歩)という新キャラも登場して、ワクワクさせてくれる。この“鳥山明さんワールド”全開の冒険ファンタジーを最後までじっくりと楽しみたい。
「SAND LAND: THE SERIES」は、毎週水曜にディズニープラスのスターで世界独占配信中。次回第8話は3月27日(水)に配信される。
◆文=田中隆信
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