――様々な工夫を経て多くの人に愛され、TVerアワードを受賞した本作ですが、現在様々な配信サイトがある中で、TVerのように無料で視聴できるプラットフォームは作り手としてどういったメリットがあるとお考えですか?
菱山 私自身テレビっ子で見逃した番組を見るのに普段から利用させていただいているので、TVerはすごく身近な存在です。そんな私が思うのは、TVerはトレンドを追うための媒体として非常に優れているなと。私自身もSNSで話題になっている番組を後から追いかけることが多いので、そういう意味でもTVerは欠かせません。視聴ランキングも表示される形式になっているので、今回の『薬屋のひとりごと』に関しても、「ここにもし組み込むことができれば、より多くの方に見ていただけるのでは」という期待を込めて、TVerさんとはお取り組みをさせていただいています。
――おっしゃるように、本作もランキング上位に入っているのを見て、「話題になっているから観てみよう」という感じでどんどん再生数が伸びていったのかもしれないですね。
菱山 そういうパターンも多かったと思います。あとは、この作品は日本テレビさんでは24時55分から放送されていますが、全国ネット放送ではなかったので、地上波放送ではすぐには観られない状況にある地域の方々がTVerを利用する形で再生回数が伸びていったのもあるのではないでしょうか。
――TVerだけではなく各配信サービスでも序盤から視聴ランキング上位にランクインしていた印象があります。
菱山 やはり一挙放送だった1話〜3話で、自己紹介ではないですが、謎解きもあり、ちょっとしたおふざけもあり、実はホロリとくるような展開もあるんだよということがしっかり伝えられたのが良い結果に繋がったのかなと思います。他にもいくつか反応が良かったエピソードはあって、例えば「これ、毒です。」という原作小説でも有名な猫猫の台詞が出てくる6話は非常に再生数も回っていた印象があります。あとは少し飛びますが、19話は猫猫が壬氏を助けにいくハラハラとする展開かつ、ここで1話から積み上げてきた伏線が一気に回収されるエピソードなので、特にアニメから入った方はもう一度見返したい気持ちになっていただけたのかなと思います。
――原作未読の方にとっては、2クール目に突入し、1話完結のエピソードが続いていると思いきやここで全部繋がるのか!という驚きがありますよね。
菱山 私たちも何度も見ていただけるような施策を用意していたので、それも効いていたのかなと思っています。また最後の2話は、監督が掲げる「親と子」というテーマに加え、私自身がこのシーズンの一つのテーマだと思っている「色々な顔を見せる愛の形」が結実するような回になり、いずれもご好評いただきました。
――内容の面白さもさることながら、厳かな後宮を表現する美術や小道具など細部の作り込みも見どころで、繰り返しの視聴に向いている作品だなと思います。
菱山 美術を担当するスタッフの皆さんが誠実に向き合ってくれたからこそだと思います。色味に関しても監督や美術監督がすごくこだわっていて、朝・昼・夕方・夜の4種類だけでは収まりきらない時間帯や季節、キャラクターの心情を最大限表現するために、何十色ものパターンを用意した上で使っているので、後宮一つとってもその時その時で全然違った印象になっていると思います。見返していただく際にはその辺りにも注目していただきたいですね。
――先日放送された最終話でアニメ第2期の制作決定が発表されました。そこに向けた意気込みを最後にお聞かせください。
菱山 たくさんの方に楽しんでいただいた第1期に引き続き、第2期も丁寧に制作してまいりますので、続報を楽しみにお待ちください!
■取材/岡本大介 文/苫とり子
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