原作は、昔々、広告の会社に勤めていた頃のことを思い出しながら書いた小説です。自分も周囲もみんなおバカで、なんとなく負け組で、毎日死ぬほど忙 しく、それなのにとっても面白い日々でした。
ドラマでもそんな雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
同時代を生きてきた同じ物書きとして荻原浩さんの作品にはいつも強く共感させていただいてきました。ですので、とても光栄であると同時に緊張もします。ドラマ化されて良かったと思っていただけるよう頑張りたいです。
そして、私は、沢村一樹さんの演技が大好きなんです。真っ直ぐで繊細で気取りがなく、美しい演技をする俳優さんです。何度でも仕事がしたい、書きたい、沢村さんとの仕事 、とても楽しみにしています。
最近のテレビドラマを見回してみてほしい。如何に「刑事もの」や「医者もの」と呼ばれる、善悪が分かりやすく刺激的なドラマが多いことに気が付くだろう。そんな中、かつての「ホームドラマ」のように「生きるってことは素晴らしい」とか「人と交わるって面白い」といった、シンプルなテーマを真っ向から描いたドラマを創れないものかと思い続けていた。
それを実現するために私が狙ったのが、「3つの要素の相乗効果」である。一つ目は「原作」だ。私は直木賞作家、荻原浩氏に目を付けた。荻原氏は若年性アルツハイマーを扱った硬派なものからサラリーマンの悲哀や旅芸人のユーモラスな話まで、実に幅広いジャンルを手掛ける素晴らしい小説家だ。
沢山の作品の中から、私は荻原氏が広告マンであった頃の経験を基に書いたという「ユニバーサル広告社」を選んだ。広告という流行の先端を行くような材料をうまく使いながら、「人情」や「人と人との絆」といった普遍的なテーマがしっかりと作品の芯として貫かれていることが見事だと思ったからだ。
二つ目の要素「脚本家」は、岡田惠和氏がベストだと思った。岡田惠和氏の書くドラマの登場人物のセリフには人生がある。その人が過ごしてきた時間や年月や悲喜交々が織り込まれている。
最後の三つ目の要素は「主演」である。沢村一樹氏は孤高の刑事をやったら結構渋いし、超ワンマンな社長になれば十分にムカつくし、お人好しのサラリーマンを演じたら思い切り笑える。つまり「中途半端ではない」「振り切った」表現が素晴らしいと常々思っていた。
そして「荻原浩×岡田惠和×沢村一樹」という3つの要素が交わるステージとして選んだのが、日本各地で 1980 年代後半頃から問題が顕著化している「シャッター商店街」だ。ちょっぴりシニカルな社会問題も入っているが、決して堅苦しいドラマではない。商店街のかなりおかしな人々と残念なくらいイケてないユニバーサル広告社の面々が繰り広げる、王道の「人生ドラマ」。金曜の8時は安心してテレビの前に座り、泣いて、笑って、感動する時間を過ごしてもらえると確信している。
かつては一流広告代理店の売れっ子であり、時代の寵児とも言われた時もあった杉山 (沢村一樹)。自分の力を信じて、大手広告代理店を飛び出し独立を考えたが思い描いていたようにうまくは行かず、弱小会社「ユニバーサル広告社 」に拾われる。
不運は続き、会社の移転でたどり着いたのが港町の寂れたシャッター商店街…。だが、どんなに寂れて活気がない町でも、人が生きている以上、悩みがあり、小さな依頼だが仕事がある。新天地で弱小広告社の新たな奮闘が始まる。
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