「スター・ウォーズの日」である5月4日に全6話の短編オリジナルアニメーションシリーズ「スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・エンパイア」が配信された。2022年10月に配信された「スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ」では、ヨーダの弟子でありクワイ=ガン・ジンの師匠でもあるジェダイのドゥークー伯爵、ジェダイでアナキン・スカイウォーカーの弟子でもある“アソーカ・タノ”の物語がそれぞれ3話で描かれたが、今作ではナイトシスターのモーガン・エルズベス、元ジェダイのバリス・オフィーについて各3話で描かれている。今回はモーガンのエピソードを中心に物語を掘り下げる。(以下、ネタバレを含みます)
モーガンの物語は第1話から第3話で描かれた。モーガンは、ダークサイドのエネルギーが強い惑星ダソミアに住む魔法を使う女性“ナイトシスター”の一族で、クローン戦争で一族が全滅したが彼女だけが生き残った。その“怒り”を持ち続け、帝国の宇宙艦隊建造に貢献。多くの星を略奪し、多くのものを破壊した。
「マンダロリアン」シーズン2の第5話「チャプター13:ジェダイ」で、マンダロリアンがアソーカ・タノに「何者だ?」とモーガンのことを聞くと、アソーカがそのような彼女の生い立ちなどを語るシーンがある。今作では、それらをたどることができる。故郷のダソミアを破壊され、一族が虐殺されるのを目の当たりにし、“恐怖”を感じたモーガン。“山の民”に命を救われ、唯一の生存者となるが、山の民の“母”の「ここにいれば攻撃されることはない」という言葉を信じられず、若者たちを巻き込み、犠牲者を出してしまう。
これが彼女の人生における大きな転機の一つとなった。続く第2話では“帝国の宇宙艦隊建造に貢献”の部分が描かれている。コルヴァスの監督官になったモーガンが、帝国に自身が設計した艦隊を売り込むが、「コストが掛かり過ぎる」という理由で却下される。しかし、パレオン(スローン提督の副官)という人物だけはその設計に興味を持ったようだ。コルヴァスに帰ったモーガンを待っていたのは、住人たちの反発。成果を得られなかったことに対して、強く糾弾されることとなった。それに対して“怒り”を覚えたモーガンだったが、彼女の設計に興味を持ったパレオンが再び現れ、彼を介して“スローン提督”と出会う。これもモーガンにとって大きなターニングポイントの一つだと言える。
第3話は、新共和国の特使がコルヴァスにやってきて、モーガンに惑星の明け渡しを伝えるが、もちろんモーガンはそれを拒否。それどころか、特使一行を皆殺しにした。このエピソードは、「マンダロリアン」シーズン2第5話の、アソーカ・タノが登場するエピソードにつながっていくものなので、続けて見ることでモーガンの考え、背景などがより鮮明に見えてくることになる。ちなみにドラマシリーズ「スター・ウォーズ:アソーカ」の第1話、第2話でもアソーカと対立するシーンが見られる。
第4話から第6話はバリス・オフィーの物語。バリスは「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」に登場するジェダイ。「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」のシーズン5エピソード17からの“ジェダイ聖堂”における爆破テロの首謀者だが、アナキン・スカイウォーカーと共に事件の真相を探るアソーカ・タノを陥れ、首謀者に仕立て上げた。それによってアソーカはジェダイ・オーダーから追放されてしまう。アナキンがバリスを捕まえ、パルパティーン最高議長らの前で真実を告白させたことでアソーカの潔白は証明され、ジェダイ・オーダーへの復帰も許されたが、アソーカはそれを断った。このバリスが起こしたテロは、アソーカ、そしてアナキンの運命も変える大きな出来事となっていた。
今作では、捕らえられた後のバリスのことが描かれている。その後のバリスのことは語られてこなかったので、ここでのエピソードはどれも新鮮で衝撃的。ジェダイを裏切ったバリスだが、その後もいろんな葛藤を抱えて生きていたことが分かる。アナキン(ダース・ベイダー)やアソーカとの接点もあり、この3つのエピソードから彼女の波乱に満ちた生涯を知ることができる。
モーガンがどうしてスローン大提督の手下となったのか、バリスはジェダイやアソーカたちを裏切った後どうなったのか。そういったこれまで見えなかった部分にフォーカスが当てられており、シリーズの他の作品につながるエピソードも多数。以前に見たエピソードも、今回の「テイルズ・オブ・エンパイア」の後で見直してみると、違う視点で物語を捉えることができるはず。今後も「テイルズ・オブ」シリーズでいろんな人物の違う側面が見られることを期待したい。
「スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・エンパイア」は、ディズニープラスで独占配信中。
◆文=田中隆信
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