彼がいわゆる“実力派”などと評されるようになったのは、蜷川幸雄監督の映画「青の炎」(2003年)に主演した頃だっただろうか。この頃から「Stand Up!!」(2003年TBS系)を始め連続ドラマでも主演を務めるようになっていった。
決定的だったのは2006年、ハリウッド映画「硫黄島からの手紙」に出演したことだろう。嵐という看板を超えてその名を轟かせた。そんな中でも前年に放送された倉本聰脚本のドラマ「優しい時間」(2005年フジテレビ系)が印象的だ。陶芸職人を目指す寡黙でナイーブな若者を繊細に演じ、役者・二宮和也のイメージを決定づけた。
このとき二宮は役作りのために専門家から陶芸を習っている。その時に言われたことが「心に残っている」と後に語っている。「これは他の誰にも真似できない、俺にしかつくれない皿だというものは、1枚なら誰でもつくれる。それよりももっと難しいのが、どこにでもある、割れたらすぐに替えが利くような、平凡な皿をつくることだって」(「ぴあ」2023年10月3日)
二宮は芝居もまったく同じだと思った。「大見得切って、発狂して、泣いて、人を刺して殺してみたいなのは誰にもできる」と。「それよりも、ただ普通に座って、飯食って、友達と話して、人の話を聞いて、泣いている人に寄り添って、そういうお芝居の方がずっと難しい。すごく地味だし、正直そういう平凡なシーンってやっていても日々の達成感はあまりないのかもしれないけど、そういうことがちゃんとできるようにならなきゃいけないんだって」(同)