“アングラ演劇の旗手”の寺山修司、18歳で鮮烈に歌壇デビュー…没後40年の締めくくりに振り返る非凡な軌跡

2024/05/31 18:00 配信

映画 芸能一般 コラム

「草迷宮」(C) 紀伊國屋書店

寺山修司の映画と舞台を放送


CS衛星劇場では「寺山修司没後40年記念特集」と題して、寺山修司作の舞台や、寺山修司が監督・脚本を務めた映画を放送する。

6月29日(土)夜6:00からは、没後40年記念公演「三上博史 歌劇-私さえも、私自身がつくり出した一辺の物語の主人公にすぎない-」(今年1月上演)のステージをテレビ初放送。「演劇実験室◎天井棧敷」の後継劇団、「演劇実験室◎万有引力」が手掛け、寺山作品の膨大なテキストからその心髄を紐解いた、他に類を見ないステージ作品。三上博史の魅力あふれる肉声に加えて、一流ミュージシャンたちの生演奏による素晴らしい楽曲や詩の数々。さらに、歌や詩の朗読のほか演劇シーンもふんだんに盛り込み、伝説的舞台「レミング-壁抜け男-」の影山影子役をはじめ、三上が早替わりで演じ分ける寺山作品の多種多様な登場人物にも注目だ。

6月22日(土)夕方5:00からは、三上が16年ぶりに舞台出演したことでも話題を呼んだ2003年の舞台「魔術音楽劇 青ひげ公の城」のステージを放送する。中世フランスの青ひげ公の城に、迷い込んだ女優志願の少女。次々と現れる青ひげの妻と称する女優たち。幻想と現実の交錯する舞台裏で、次々に起こるオペラの殺人。アヴァンギャルドのカリスマ・寺山修司による傑作戯曲だ。

映画も3作品がラインナップ。

6月2日(日)夕方4:15からは、15歳の三上の鮮烈デビュー作、映画「草迷宮」を放送する。死んだ母親が口ずさんでいた手鞠歌の歌詞を求めて旅する青年・あきら。小学校、寺、遊郭などで歌詞を訪ね歩くが、誰もその内容を知らない。彼の姿はいつしか生きていた母と暮らす15歳の自分と重なっていく。泉鏡花作品を原作にした、現実とも空想ともつかないイメージが繰り広げられる幻想シーンが圧巻の映像作品だ。

6月2日(日)昼0:45からは、寺山さんが商業映画として監督した唯一の作品「ボクサー」(1977年)を放送する。障害を抱えた新人ボクサーと、彼に弟を殺されたトレーナーの確執と和解を描く物語で、トレーナー役の菅原文太が自ら企画も立てた作品。ボクシングを愛した寺山さんの思いが詰まった<寺山美学>の結晶。具志堅用高らプロボクサーたちの出演も話題を集めた。

6月4日(火)朝10:00からは、寺山さんの脚本を篠田正浩が監督し、加賀まりこの映画デビュー作でもあった1962年の映画「涙を、獅子のたて髪に」を放送する。湾岸労働者を搾取しているごろつきと純真な少女の、凄惨な恋愛模様。横浜を舞台に若いチンピラの暴走を描いた松竹ヌーヴェル・ヴァーグの傑作だ。

「ボクサー」(C)東映


47年の生涯を鮮烈に、強烈に駆け抜けた寺山さん。彼が遺した“ことば”は、没後40年を経た今も多くのファンに愛され、読み継がれ、歌い継がれ、演じ継がれている。衛星劇場の<没後40周年記念特集>で、その神髄に触れてみてはいかがだろうか。

「涙を、獅子のたて髪に」(C)1962松竹株式会社


※「演劇実験室◎万有引力」の「◎」は正しくは白丸の中に黒丸。
※「演劇実験室◎天井棧敷」の「◎」は正しくは白丸の中に黒丸。

◆文=酒寄美智子