疲れ切った日々を送る息子・昭夫を演じるのは、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年、NHK総合ほか)での好演も記憶に新しい大泉洋。山田監督作品への出演も、吉永との共演も今回が初めてだが、わびしくお掃除ロボットに話しかけたり、下町のせんべいをかじって「腹の足しは心の足し」とちょっといい一言を吐いてみたり、素直さと人の良さを漂わせる彼ならではのおかしみあるキャラクターを好演している。
昭夫の娘で父親になかなか素直になれない舞を演じるのは、連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年、NHK総合ほか)のヒロインも務めた永野芽郁。この3人を中心に繰り広げられる等身大の家族の物語は、第47回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞(吉永小百合)、優秀助演男優賞(大泉洋)、優秀助演女優賞(永野芽郁)を含む11部門で優秀賞を受賞。日本映画界でも高い評価を受けた。
母と息子、父と娘、そして祖母と孫。それぞれの関係性が下町を舞台に溶け合い、そして生まれる人生賛歌。それが映画「こんにちは、母さん」の見どころだ。
「衛星劇場」では「こんにちは、母さん」のテレビ初放送を記念し、<吉永小百合出演作特集>を展開する。
6月7日(金)朝8:30からは、坂東玉三郎監督作品「夢の女」(1993年5月)を。永井荷風の同名の初期小説を久保田万太郎が新派のために脚色した舞台用の台本をもとに、侍の娘ながら娼婦に身を落とした女・お浪の儚い半生を描く。
6月12日(水)夜7:30からは、女優吉永小百合の原点ともいえる映画「キューポラのある街」(1962年4月)を送る。貧しさにもめげず強く生きる子供たちをテーマに描いた感動作で、主演の吉永は当時、最年少でブルー・リボン主演女優賞を受賞した。
6月13日(木)夜7:30からは、映画「真白き富士の嶺」(1963年11月)を放送する。重い病を患う梓(吉永)は、退院し逗子の浜辺を解放されたようにはしゃぎまわっていたある日、高校生の富田(浜田光夫)に一目惚れする――。太宰治の小説を原作に描く、明るく清らかなロマンス作品だ。
6月14日(金)夜7:30からは、吉永が2人の男性の間で揺れる女心を見せる青春映画「青春大全集」(1970年12月)を放送する。ピアノ調律師の律子(吉永)は、同い年のピアニスト・黒木保(松橋登)と恋人同士。だが、結婚適齢期にさしかかったある日、律子は教師の阿部吾郎(竹脇無我)との見合いを勧められる。
60年代、70年代、90年代と、それぞれの年齢で輝く吉永の名作がそろった。最新作「こんにちは、母さん」と合わせ、見る者の視線を惹きつける吉永小百合の魅力を存分に堪能したい。
◆文=酒寄美智子
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