金で殺しを請け負って、人の怨みをはらす仕業人・商売人と呼ばれる殺し屋たち。だが彼らは厳しい取締りのもと、江戸から消息を絶っていた。その一人、表向きは南町奉行所同心の中村主水(藤田まこと)は八王子に左遷されていたが、元締の鹿蔵(中村鴈治郎ほか)の手引きによって江戸へと戻される。そして飾り職人の秀(三田村邦彦)、浪人の畷左門(伊吹吾郎)と共に仕事人を結成するのだった。
1972年に始まり、実に足掛け20年・全30シリーズ続いた「必殺」シリーズ。初期の「必殺」は、男性好みのワイルドな作品だったが、この「必殺仕事人」に登場する飾り職人の秀ら華麗なキャラクターたちにより、幅広い世代から支持を得た。主人公の中村主水は、表の顔は冴えない同心で家庭に帰れば嫁と姑に嫌味を言われる情けない“婿殿”だが、裏の顔は凄腕の殺し屋。そんな日常と殺し屋とのギャップが、実に面白く癖になる。
また個性的な殺し屋たちが披露する、独創的で華麗な殺しのテクニックも必見だ。彼らが殺す相手は“世のため人のため”にならない人物に限られる。しかし、どんなに人道的に心を動かされようとも、金とひきかえの“仕事”としてしか殺しはしないのが彼らの掟。その徹底ぶりが、単なる正義の味方ではないアウトローな時代劇ヒーロー像として、唯一無二の世界観を作り上げている。
ほかにも、正義に燃える北町奉行・榊原主計頭忠之(里見浩太朗)またの名を榊夢之介が、大泥棒ねずみ小僧次郎吉(風間杜夫)と手を組んで江戸にはびこる悪に立ち向かう痛快時代劇・「八百八町夢日記スペシャル」(7/3水&4木連日14:00)や、土佐藩の下級武士である郷士・坂本八平(橋爪功)の次男として生まれた竜馬(市川染五郎※十代目松本幸四郎)が、飛び抜けた行動力と人間的魅力で維新の主役となり、激動の時代を生き抜く姿を描く時代劇「竜馬がゆく」(7/4木スタート月~金あさ8:00)等も見逃せない。
時代劇というジャンルとしては一括りになっているが、その作品ならではの個性と魅力が溢れている。と同時に、古き良き時代劇としての優雅で洗練された所作や華やかな美術セット&着物等はどの作品にも健在だ。
スカパー!時代劇専門チャンネルでの無料放送は、池波正太郎原作、松本幸四郎主演 「鬼平犯科帳」の最新作・連続シリーズ「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」の独占初放送を記念したもの。(7/6土19:00)「鬼平犯科帳」の新作を心待ちにしているファンはもちろんのこと、これから時代劇の世界に足を踏み入れる将来のファンにも向けて、名作時代劇がたっぷり味わえる6日間となっている。
無料放送で過去の名作時代劇をとことん楽しんだあとには、最新作「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」にも足を踏み入れ、時代劇の歴史の継承と進化をぜひその目で確かめてみてほしい。
構成・文=戸塚安友奈
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