細田佳央太、“映像化不可能”と言われた怪作で主演 CGシーンの演技は「常に大変でした」<七夕の国>

細田佳央太にインタビューを行った撮影:森井夏月

「寄生獣」や「ヒストリエ」などで知られる岩明均の同名漫画を実写化。映像化は不可能と言われ続けてきた“怪作”「七夕の国」が、ディズニープラスのスターにて7月4日より独占配信中だ。映画「町田くんの世界」(2019年)やドラマ「ドラゴン桜」(2021年、TBS系)で注目を浴び、最近も大河ドラマ「どうする家康」(2023年、NHK総合ほか)や「95」(2024年、テレ東系)などの話題作に出演している細田佳央太が主人公の南丸洋二(通称:ナン丸)を演じる。このほど細田にインタビューを行い、作品の世界観やCGなどを使った撮影秘話、作品のタイトルにちなみ七夕の短冊に書きたい“願い事”などを語ってもらった。

同ドラマは、“あらゆる物に小さな穴を開ける”という不思議だが何の役にも立たない超能力を持つ大学生・ナン丸(細田)が、世界に未曾有の危機をもたらす球体の謎に挑む姿を壮大なスケールで描く超常ミステリー。細田の他に藤野涼子上杉柊平木竜麻生三上博史山田孝之ら実力派俳優陣が出演する。

ナン丸という役に「最初は難しいなと」


――脚本を読んでどんな印象を抱きましたか?

先に原作を繰り返し読んで理解していましたが、その後に脚本を読んで原作とそんなに変わって
いなかったので、とても読みやすかったです。ナン丸という主人公のイメージも、漫画のまま台本
の中にいてくれたような感じがしたのでイメージの把握はすぐにできました。

――ナン丸というキャラクターに関してはどう捉えていましたか?

最初は難しいなと思いました。ナン丸がどういう男の子なのかを箇条書きで挙げることはできますが、それを芝居に反映する際にフィット感がないとうまく表現できないんです。彼はただのちゃらんぽらんな若者ではないので、その核心を早くつかみたいなと。

そもそもナン丸のような若者を見たことがないんですよ。自分と近いところもなかったですし。やりたいことが分からない子というのは確かにいます。ただ、やりたいことが決まっていないことに対して、今の子はナン丸のように楽観的に考えられないんですよね。それに対する不安や、どうしていいのか分からないという気持ちを抱えている迷いの状態にある若者のほうが多いと思うんです。

ナン丸のように“まあ、なんとかなるだろう”という、ある種の強さを持っている人と僕は出会ってこなかったので、お手本にできる人がいなかった。そういう意味ではゼロから理解していく必要がありましたし、フィットさせていかなければという思いが強かったです。

――ナン丸を演じる上でどんなことを意識しましたか?

クランクイン前の本読み(台本読み合わせ)の時に瀧(悠輔)監督から「芝居をもう少し軽くしてほしい」と言われました。僕の中にドラマっぽい分かりやすい芝居の癖が無意識についていたんです。それを取り除いてフラットに演じることを求められて。その感じをつかんだのはクランクインして3日目ぐらい。ナン丸が「丸神ゼミ」を初めて訪れるシーンで江見先生(木竜)たちと芝居をした時に何となくナン丸の方向性が決まりました。

「七夕の国」第1話より(C)2024 岩明均/小学館/東映

求められるのはフラットな芝居「余計なことは一切しませんでした」


――ナン丸はいろいろなキャラクターと向き合いますが、常にフラットな状態だったんですか?

基本的にナン丸は誰に対してもフラット。早い段階で演技の方向性が決まったので、余計なことは一切しませんでした。

――フラットな芝居というのは、ものすごく難しいイメージがあります。

すごく難しかったです(笑)。“意識しないことを意識しないといけない”し、意識しないということは意識していることと一緒ですし。そこの複雑さがあるので、力を抜いて芝居をするということは本当に大変でした。「七夕の国」に出会う前で一番フラットに近い芝居だったなと思うのは沖田(修一)監督の「子供はわかってあげない」。それまでは、割と役を作り込んだものが多かったです。今回は割と早い段階でナン丸というキャラクターをつかむことができたので良かったなと思います。

完成した4話まで見たんですけど、そのフラットな芝居がどんなふうに見てくださる方に見えるのかものすごく気になりました。現場ではこれで大丈夫だろうという手応えのようなものがあったので、あの時こうすればよかったかなということはなかったですけど、もうちょっと何かできたのかなという思いはあります。ただ、フラットな芝居というものを経験したことで新しい“引き出し”が増えたような気がします。

――演技の“引き出し”が増えることは大きな武器になりますか?

“引き出し”はあるに越したことはないと思います。でも、ちょっと危惧しているのは、あり過ぎるとできているような感じになってしまうというところ。どこかこなしちゃっているというイメージに近いので、その引き出し方がポイントになってくるのかなと思います。

細田佳央太撮影:森井夏月