“俳優デビュー25年”圧倒的な存在感を放ち続ける山田孝之、近年は監督＆プロデュース業も担う鬼才の軌跡

俳優のみならず、監督・プロデューサーとしての挑戦

変幻自在にさまざまな役柄に扮してきた山田だが、近年では製作側として手掛ける作品も増えていることも印象的。2019年に公開された映画「デイアンドナイト」では、初めて作品のプロデュースに挑戦。「人間の善と悪」をテーマに、気鋭のクリエーター・藤井道人監督、企画・原案を手掛け、さらに主演を務めた阿部進之介と心揺さぶる人間ドラマを創り上げた。

また、竹中直人、齊藤工(斎藤工)と共同監督を務めた長編映画初監督作「ゾッキ」(2020年)では、漫画家・大橋裕之氏の初期作品集に収録された作品を実写映画化。一方でドラマ作品では「聖☆おにいさん 第III紀」(2020年、NHK総合)の制作統括として、同作の監督・脚本を務めた福田と制作チームとしてタッグを組んだ。

「MIRRORLIAR FILMS」とは

そんなマルチに活躍する山田が俳優活動を通して出会った同志の伊藤主税、阿部らと2020年より始動した、短編映画プロジェクトが「MIRRORLIAR FILMS」だ。同プロジェクトは「だれでも映画を撮れる時代の幕が開く」を合言葉に、年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦するもの。2021～22年公開のSeason1～4では、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した36本の短編映画が発表されており、山田もプロデューサーとして携わるかたわら、自身もいくつかの作品に出演。7月5日に配信された最新作では大橋氏が監督を務めた「変哲の竜」で又吉直樹、伊藤沙莉らと共演している。

物語は又吉演じる主人公・竜が何げなく香ってきた匂いが学生時代の友人・正樹(山田)の家の一室を想起し、それを確かめるべく20年ぶりに連絡を取る、というおかしなひらめきから始まる。匂いによって思い出される懐かしい記憶を巡る同作は、山田演じる正樹と妻・今日子を演じる伊藤との自然な掛け合いや旧友の竜との間に流れる空気感など、些細な人間関係を丁寧に演じているのが伝わってくる16分だ。その他、シーズン5では榊原有佑氏が監督を務める「MIMI」にも出演している。

1999年に俳優としてのキャリアをスタートさせた山田は2024年に25周年を迎えた。役者としてのみならず、クリエーターとしても高みを目指し続ける彼の今後の展開もとても楽しみだ。

「MIRRORLIAR FILMS Season5」は、Leminoで独占配信中。

◆文=suzuki