「スター・ウォーズ」シリーズのレイ役で脚光を浴び、一躍スターダムにのし上がった俳優デイジー・リドリーが主演を務める映画「ヤング・ウーマン・アンド・シー」が7月19日に配信された。同作はリドリーが演じる女性初の英仏海峡横断の偉業を達成した水泳選手、トゥルーディ・イーダリーの実話に基づく物語。既にアメリカやイギリスでは劇場公開され、米映画評論サイト「Rotten Tomatoes」でオーディエンススコア98％(※7月18日時点)を記録するなど、高い評価を得ている作品だ。このレビューでは強くて勇敢な女性トゥルーディに敬意を表し、先駆的な挑戦と彼女の軌跡を追う。(以下、ネタバレを含みます)
1905年にニューヨークで生まれ育ち、強い意志で社会の荒波に立ち向かったトゥルーディ・イーダリー。天真らんまんなトゥルーディと姉のメグ・イーダリー(ティルダ・コバン=ハーヴィー)は、保守的な父ヘンリー・イーダリー(キム・ボドゥニア)の反対を押し切り、水泳を習うところから物語は始まる。彼女たちに泳ぎを教えたコーチのシャーロット・“エピー”・エプスタイン(ショーン・クリフォード)の献身的なサポートにより次第に水泳の才能が開花していったトゥルーディは、1924年にフランスで開催された「パリオリンピック」に水泳選手として出場することに。
一方で「女性の社会的活躍」を期待していない社会の風潮、男性たちの傲慢さが際立つこの時代、女性が泳ぐこと自体やスポーツ選手としての地位を確立することに対してのサポートはなく、まともに練習をさせてもらえなかったトゥルーディら女性選手たちは満足いく結果を出せずにパリから帰国することになる。
また、ずっと一緒に夢へと向き合ってきたと思っていた姉のメグから、父が勝手に決めた男性との結婚を受け入れたことを帰国後に明かされるトゥルーディ。まさにこの時代を生きた女性を象徴しているように描かれ、姉妹といえど対照的な人生を歩むことを決意した印象的なワンシーンだ。
その後、トゥルーディは“強い男性”だけが成し遂げられるとされていた英仏海峡を泳いで横断する挑戦を決意。彼女が選んだ英仏海峡は、最短距離約34kmといわれるが、速い潮流の影響などを受け、実際に泳ぐ距離は60kmにも及ぶ命懸けのチャレンジということもあり、数々の挑戦者を退けてきた。
男性ばかりの挑戦者の中で、果敢に挑むトゥルーディのことを気に食わない人も多く、一度目の挑戦は味方のコーチ陣に阻まれ失敗。それでも諦めない彼女はアメリカには戻らず再び挑戦を決意し、見事に英仏海峡横断を達成することになる。
“女性には不可能”だという周囲の声をはねのけ、女性の社会進出やスポーツ選手としての地位確立に貢献した“女性のヒーロー”として多くの人に勇気と希望をもたらした。
同作は映画「マレフィセント2」(2019年)や「パイレーツ・オブ・カリビアン／最後の海賊」(2017年)を手掛けたヨアヒム・ローニングが監督を務め、映画「トップガン マーヴェリック」(2022年)のジェリー・ブラッカイマー、チャド・オマンがプロデューサーとして名を連ねた。
主人公を演じたリドリーは「スター・ウォーズ」シリーズのレイ役でブレークし、本作でも光る演技力を発揮している。
劇中では海や水泳場などでの水中撮影が多く、特に海での撮影は自然特有の予測不可能な環境だったため、彼女は撮影前から撮影中も含めて過酷なトレーニングを積み重ねてきた。トレーニング当初は「25mくらい泳いだだけで息切れしてしまったの」と明かしていたリドリーだったが、彼女の並大抵ではない努力の成果もあり、英仏海峡横断に挑戦するシーンではプロ水泳選手のような完璧な泳ぎを披露している。
そんなリドリーの演技力でよみがえるトゥルーディからは、力強さや目標に向かって突き進む勇姿だけでなく、さまざまなパワーを感じさせられた。さらにこの物語に登場する女性たちは、時代の逆境に立ち向かいながらも周囲の女性たちと手を取り合い、女性のエンパワーメントで未来を明るく照らしてくれている。
本作で描かれたトゥルーディの偉業達成は、彼女を信じて粘り強く支えた、多くの女性たちの物語としても視聴者の心に届いてほしい。
映画「ヤング・ウーマン・アンド・シー」は、ディズニープラスにて独占配信中。
◆文=suzuki
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