大河でも注目の玉置玲央、映像と舞台の演技に垣根はない 演劇ブームの熱狂をもう一度取り戻せたら

演劇ブームの熱狂をもう一度取り戻せたら

玉置玲央撮影=市川秀明


――今回、「生の藤原道兼が見たい」という方もいらっしゃるかと思いますが、大河の影響は感じていますか?

どうなんでしょうね。僕は大河の出演回が終わってからすぐに1本舞台をやらせていただいて、劇団公演だったんですけど(柿喰う客「殺文句」)思ったほど反響はないなと思いました。やっぱりドラマでも出番が終わって日が経つにつれ、新しい登場人物も出てきて記憶から薄れていく。ただ劇団の公演では一言も喋れない役だったので、もし大河をきっかけに観に来て下さって「玉置さんの声を聞きたかったのに喋らないじゃん」って思ってる方がいらっしゃったら、今回はいっぱい喋るから聞いて!とは思います(笑)。

――とはいえ、SNSを見ていると、大河ドラマをきっかけに初めて舞台を観に行ったという声をかなり見かけた印象があります。今の日本だと演劇を観る層が限られている中で、幅広い方が視聴するNHKのドラマに出演して、その後すぐ劇団公演に出演するというのは、ご自身が演劇への架け橋になりたいという気持ちもありますか?

確かに、今回の劇団公演のお客様アンケートで、今までは20~ 30代の方が多かったところに、40~50代の方がすごく増えたんです。それはもしかしたら大河の影響なのかもしれないなと。僕は映像作品も舞台も好きですが、もう少し舞台の世界に還元できるような良いサイクルを作れないかな?とうっすら考えながら俳優をやらせていただいてて。

演劇ってすごく限られた芸術で、生で体験しなきゃいけない。日常生活の中で勝手に入ってくるものではなくて、お客様自身に一歩足を踏み出していただく必要があるので、そのために何ができるだろうって考えています。それこそ2.5次元は劇場に人が足を運ぶ流れを作ってくれていて、すごい発明だなと思うんですけど。

第三舞台が活躍してた時代って、第三次演劇ブームと言われて、舞台を観ることがトレンドだったんですよね。ネットも発達してないから、口コミで噂が広まって人が集まるみたいな。僕らはそのブームの終わりの方に触れて、そのロマンを感じながら育ってきた世代なんで、どこかでその熱狂をもう一度取り戻せないものだろうかって考えたりもするんですよ。同世代の俳優とそういう話もするし、そういうことをやれたらいいなと思いながら舞台に立ち続けてます。

――以前玉置さんのブログで、「ドラマと舞台でお芝居に違いはない」という内容を拝見しました。実際、道兼が慟哭するシーンはSNSでも反響が大きくて「シェイクスピアみたい」という声があったりもしたので、良いお芝居に媒体の垣根はないのかなと感じたんですが、演じる上での意識はいかがですか?

垣根は感じてないですね。「光る君へ」のお芝居は、舞台のお芝居だとも映像のお芝居だとも思ってなくて、道兼の心情と台本の流れから、こういう表情になる、こういう身体の使い方になる、と思ってやった結果です。僕自身はどんな役でもそうなので、演技を媒体によって変えているとかはないです。

昔は映像に出ると「玉置さん、ちょっと声でかいです」「お芝居が大きいです」「もうちょっと普通に喋れますか」とか言われて、それがすごくコンプレックスだったんですよね。舞台の世界で生きてる人間って映像では通用しないのかなと思った時期もあったんですけど、そんなことはないんだなと。やるべきことをきちんと考えて実践して取り組めば、垣根はないし、そもそもそんな考え方すら必要ないんだなと思うようになりました。

――最後に、お忙しい日々かと思いますが、日々の癒しになっていることがあれば教えてください。

何だろう…でも結局散歩ですかね。趣味が散歩なので、カメラを片手に歩いて、「おっ」と思った風景の写真を撮るのが好きです。舞台とかお芝居って、僕にとってすごく非日常で、散歩したり家で過ごしたりする時間は圧倒的な日常。それが乖離しているほど僕は健全に過ごせて、活動への原動力にもなるのかなって気がしています。

玉置玲央撮影=市川秀明


■取材・文/WEBザテレビジョン編集部
撮影/市川秀明
ヘアメイク/西川直子
スタイリスト/森川雅代

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